都市部における地盤のリスク
東日本大震災は、震源地の東北から首都圏に至るまで、広い範囲で被害が起きたわけであるが、はるか700km以上離れた大阪府の超高層ビル(「咲洲庁舎」)で360ヵ所もの損傷があったことはご存じだろうか。このビルでは、エレベーターのワイヤーが絡まり、5時間以上も人が閉じ込められた。大きな揺れが10分以上も続く、長周期地震動だ。対策に、大阪府は10億円近い改修工事の発注を余儀なくされた。長周期地震動は、人が感じないくらいの(2秒以上の)大きな揺れが建物の固有振動と共振した際に起きる、超高層ビルディング特有の現象である。2004年の新潟県中越地震で六本木ヒルズが被害を受けたことにより、広く知られるようになった。2010年12月、国土交通省は長周期地震動の対策試案を発表し、意見募集に入った。関係団体や民間企業への打診も終えつつ、いよいよ対策が具体化しつつあるタイミングで東北地方太平洋沖地震が発生したのである。
長周期地震動は、建物の構造だけが問題なのではない。都市部ならではの厚い堆積層が、揺れを増幅させることも現象を引き起こす条件のひとつ。したがって、大きな河川の河口部に発展した大都市、東京、名古屋、大阪はいずれもそのリスクを抱えているといえるのだ。
タワーマンションの長周期地震動
上の画像は、独立行政法人防災科学技術研究所が運営するサイト「地震ハザードステーション」の一部。ここでは、たとえば震度6レベルの大地震がどれくらいの確率で起こり得るか、震源地の場所から各地をシュミレーションできる情報提供ツールである。このなかには、表層地盤情報もインプットされている。
上の拡大した画像を見ると、先ほど述べた「堆積層で覆われた都市部のリスク」が一目瞭然だ。赤い部分が濃くなるほど「揺れやすい地盤」。画像の下にある目盛りは「表層地盤増幅率」をあらわしている。数値が大きいほど、揺れが増して建物に届く。そんなイメージである。さらに拡大した画像もご覧いただこう。