労務管理/労務管理に関する法律

パート・バイトなど有期労働契約の新ルールの留意点(3ページ目)

労働契約の民事的ルールは、労働契約法が拠りどころです。労使の合意によって労働契約が結ばれることが明示されています。労働契約でのトラブルでは、特に有期労働契約の「雇い止め」の問題が多発していますが、今般それに対応すべく労働契約法が改正され、新しいルールができました。今回は実務上の留意点を具体的に解説します。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

■最高裁判例「雇止め法理」が法定化されました!

雇止めをするときには、最高裁の判例(雇止め法理)を確認しておこう

雇止めをするときには、最高裁の判例(雇止め法理)を確認しておこう

有期労働契約は労働契約の期間が決まっている契約なので、使用者が更新を拒否したときは、契約期間の満了により雇用が終了します。これがいわゆる「雇止め」です。 雇止めについては、前述のとおりトラブルが多発しています。

解決のポイントは、過去の最高裁の判例を確認することからです。裁判で確立したルールはあくまでも判例ですから、法令で規定(明文化)はされていませんでした。今回の法改正では、この判例で確立された雇止め法理の内容や適用範囲が条文化されたのです。

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは「雇い止め」は無効となります。

下記のいずれかに該当する有期労働契約では、使用者が雇止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めが認められません。従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになるのです。

対象となる有期労働契約は次のとおりです。

・過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの

・ 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

判例による表現なので堅いですね。要は、有期労働契約の更新手続きが形式的になっていたり、更新が見込まれるような発言が企業側からなされていたような場合は、従業員側が更新の期待を持つのもある意味当然だろう、ということです。その状況下で、いきなり「雇い止め」をされたらトラブルも当然発生しやすくなりますね。

労働者からの有期労働契約の更新の申込みがあった場合には、上記を心しておかなければならないのです。契約期間満了後でも遅滞なく申込みがあればこのルールは適用されます。従って、更新があるのかないのか、どういう場合に更新がされるのか、合意内容をきちんと書面で取り交わしておくことは必須条件なのです。

■ 不合理な労働条件は禁止されます

同じ企業の従業員でも、職務内容などの違いにより労働条件に差をつけることはありますね。その他法令に違反していなければもちろん構いません。今回の改正では、論点を変えて、有期契約と無期契約労働者との間で、期間の定めがあるなし、によって不合理に労働条件に差をつけることを禁止したルールが規定されたのです。

1. 対象となる労働条件
一切の労働条件です。賃金や労働時間等の労働条件だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇のことです。

2. 判断の方法
労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、次の内容を考慮して判断がなされます。
・ 職務の内容(業務の内容および当該業務に伴う責任の程度)
・ 当該職務の内容および配置の変更の範囲
・ その他の事情

特に、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、上記3つを考慮して、特段の理由がない限り合理的とは認められないと解されると、厚生労働省から通知がなされています。

同じ職務内容を遂行していても、有期・無期の違い(期間の定めのあるなし)を理由として差をつけてはいけない、ということです。自社の従業員の業務内容を検証してみてください。教育訓練や福利厚生制度などの適用などで差をつけている場合にはトラブルになる恐れがあります。

【関連資料】
労働契約法が改正されました(厚生労働省)

労働契約法改正のポイント(厚生労働省リーフレット)

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