労務管理/労務管理に関する法律

パート・バイトなど有期労働契約の新ルールの留意点(2ページ目)

労働契約の民事的ルールは、労働契約法が拠りどころです。労使の合意によって労働契約が結ばれることが明示されています。労働契約でのトラブルでは、特に有期労働契約の「雇い止め」の問題が多発していますが、今般それに対応すべく労働契約法が改正され、新しいルールができました。今回は実務上の留意点を具体的に解説します。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

3つのルール、具体的企業実務はこうする!

では、企業実務上3ルールの個別対応方法を解説していきます。特に1.の無期労働契約への転換は下記図表(時系列)で確認するとよく分かります。

■ 無期労働契約への転換を時系列で確認

無期労働契約への転換は時系列の図表で確認しよう

無期労働契約への転換は時系列の図表で確認しよう

同一の使用者(法人単位・個人事業主単位)との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、従業員からの申込みにより、無期労働契約(期間の定めのない労働契約)に転換できるというものです。
※ 5年のカウントは、このルールの施行日以後に開始する有期労働契約が対象です。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めません。

厚生労働省リーフレット(労働契約法改正のポイント)から抜粋

厚生労働省リーフレット(労働契約法改正のポイント)から抜粋


上記図表の節目ごと、次の点を押さえてください。

1. 申込み
現在の有期労働契約期間中に通算契約期間が5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間(図表1括弧内の間)に、無期転換の申込みをすることができます。

2. 転換
無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する翌日(図表の2)からです。この場合、2の時点で使用者が雇用を終了させようとする場合は、無期労働契約を解約(解雇)する必要がありますが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」には、解雇は権利濫用に該当するものとして無効となってしまうことに注意をしなければなりません。

3. 無期労働契約
無期労働契約の労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間など)は、直前の有期労働契約と同一となりますが、別段の定めをすることにより変更可能です。変更する場合は、労働協約、就業規則、個々の労働契約(労働条件を変更について労働者と使用者との個別の合意)で定めをすることで対応しないとトラブルになります。この点留意してください。

4. 更新
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません。この点も注意してください。

5. 空白期間(クーリング期間)を下図で確認する
有期労働契約と有期労働契約の間に、空白期間(同一使用者の下で働いていない期間)が6カ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は5年のカウントに含めません。これをクーリングといいます。つまり、通算契約期間がリセットされるのです。図表5の空白期間の前の期間はカウントされなくなります。空白期間後に新たな5年がスタートしていますね。

上図の場合以外でも、通算対象の契約期間が1年未満の場合は、その2分の1以上の空白期間があればそれ以前の有期労働契約は5年のカウントに含めないことになっています(詳細は厚生労働省令で別途定められます)。

厚生労働省リーフレット(労働契約法改正のポイント)から抜粋

厚生労働省リーフレット(労働契約法改正のポイント)から抜粋


次のページでは、最高裁判例「雇止め法理」の法定化について解説しています。

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