東京・立川市の高齢母娘の死亡事例 遺体発見時には死後1カ月が経過していた
安否確認したくても、本人の許可なく勝手に入室することは許されない。
当然、マンション居住者も高齢化が進み、その結果、高齢母娘の死亡事例のような惨劇が起こってしまうわけですが、その高齢母娘のケースでは遺体発見時、すでに死後1カ月が経過していました。安否確認しようと思っても、本人の許可なく勝手に住居に立ち入ることができない難しさが発見を遅らせてしまいました。
そこで、東京都および都住宅供給公社では迅速な安保確認ができるよう、緊急時における入室判断の具体的な基準を策定し、今年4月から一般にも公表しています(下記参照)。「昼間でも照明が点灯したまま」「郵便物や新聞が溜まっている」といった“外観上の異変”だけでなく、「世帯員に障がい者や要介護者がいるかどうか」といった“世帯の状況”にまで踏み込んでいる点は評価に値します。管理組合でも同様なルールを策定しておくと、いざという時の緊急対応がスムーズになると思われます。
【東京都および都住宅供給公社が定める安否確認のための入室の判断基準】
安否確認に際しては迅速な入室を基本とし、入室判断の具体的な基準を(1)(2)(3)に分けて設定する。
(1)次の1~3の項目のうち、1つでも該当する場合、ただちに入室
- 室内から応答があるが、扉が開かない。
- 対象世帯が室内に在室しているのが明らかであるが、応答がない。
- 室内から異臭がする。
(2)次の「住宅の状況」と「世帯の状況」に該当する場合、ただちに入室
≪住宅の状況≫
- 応答がないのに電気メーターの動きが大きい、テレビがつけっ放し、昼間なのに室内の照明がつけっ放し、などの状況が確認される。
- 郵便物や新聞が溜まっている。
- その他、通常の生活と相異する異変の情報がある。
- 対象世帯の世帯員に高齢者がおり、これまで現場の状況から推定される期間、留守(不在)にしたことがない。
- 対象世帯の世帯員に障がい者がいる。
- 対象世帯の世帯員に生命に係わる持病(人工透析など)や要介護(寝たきり、認知症など)の情報があるが、入院などの情報はない。
- 生活を支える世帯員が一人のみで、他の世帯員が幼少など自ら救出を求めることができない。
- 現地調査以外の調査において、対象世帯の状況が分からない。
- 1の調査後、ただちに現地で行う再調査の結果、対象世帯の状況に変化がなかった(水道メーターの動きがなく、郵便物や新聞が溜まり続けている)
「自助」「共助」「公助」の3段活用で高齢者の孤立死を回避せよ!
以上より、どうすればマンション内での高齢者の死亡事例をなくせるか?―― 私ガイドは「自助」「共助」「公助」の3段活用が解決の鍵を握ると考えます。
とはいえ、年を重ねるに従い身体機能は低下し、高齢者が能動的に緊密なコミュニケーションを取り続けるには限界があります。そこで、自発的にSOSを発信できない高齢者に対して、手を差し伸べるのが管理組合の役目です。たとえば、マンション内で有志を募り、「見守り隊」を結成して定期的に独居高齢者のお宅を訪問するなど、居住者同士で連携し、お互いを支え合う「共助」の精神を育むことが重要です。理事会が受け皿となり、高齢者からの相談に乗るのも良策です。同じ屋根の下で生活する者同士、連帯を組むことが第二ステップとなります。
さらに、第三ステップとして、行政による公的サービスも並行して上手に活用しましょう。各自治体では様々な高齢者向けサービスを用意しており、たとえば定期的な電話により、1人暮らし高齢者が元気かどうかを安否確認する「高齢者安心コール」や、食事を配達してくれる「配食サービス」など、いくつもの高齢者支援策があります。
管理組合としては、お住まいの自治体でどのような支援サービスを実施しているか、そのサービス内容を調べ、マンションにお住まいの高齢者へ案内してあげるといいでしょう。公的サービスの説明会を開催したり、申込み手続きの支援なども喜ばれます。せっかく行政が用意してくれているわけですから、利用しない手はありません。
管理組合が孤立死の予防対策をしないのは怠慢以外の何物でもありません。「自助」「共助」「公助」を3段活用し、マンション内での高齢者の孤立死をなくしていきましょう。