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なぜ増えない? 免震マンションが抱える事情(2ページ目)

昨年リーディングカンパニー2社が相次いで宣言したタワーマンションの免震化。さみだれ式に続くかと思われたが、追随する動きはいまだ見えない。大手ゼネコンでも、震災直後は「進行中プロジェクトの免震変更への打診が急増した」といっていたが。果たして免震マンションは普及していくのか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

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免震マンションの普及を阻む3つの要因

免震の概念図

免震の概念図

免震建物はコスト高がデメリットだといわれている。一体数百万円かかるアイソレーターや、アイソレーターを備え付ける免震ピットの建設がそのおもな原因だ。地震に強い利点を分譲価格に上乗せできれば課題は解決するのだが、免震マンションの価値が価格に反映できるかどうかの検証はいまだ未知数。実例が乏しいだけに中古流通時におけるプライオリティも資料が存在しない。

次に地形の向き不向きがある。建物の形状と置き換えてもよいだろう。免震は、その構造が一番適している(より効果を発揮しやすい)のは、真四角でずんぐりした形。細長いスレンダーな塔状や低層には向かない場合もあるという。つまり、どのような条件下でも等しく免震を検討することが望ましいとはいえないようだ。

そして、もっとも大きな要因だと思われるのが「誰でもできる工法ではない」ことだ。免震で新築する、または既存の建物を免震にリフォームする(「レトロフィット」)には高い技術力と施工力の双方がそろっていなければならない。アイソレーター(免震装置)を建設現場へ納品する積層ゴム製造メーカー曰く、「経験の差が如実にあらわれる」と証言している。

免震マンションを手掛ける企業は限られている

免震マンションのモデルルームやチラシを見たことがある人は、免震の概念を説明したイラストや模型を目にする機会があったと思うが、実際の建物内部にある免震ピット内は(当然といえば当然だが)イメージ図ほど簡素ではない。下の画像は、とある免震マンションの地下(「免震ピット」)を撮影したものだ。

真ん中の青い部分が「アイソレーター(免震装置:この場合「積層ゴム」)」。上の赤部分が建物。下は地盤とつながる基礎だ。つまり、赤い部分と基礎部分が地震時には異なった動きをする。よって、建物が揺れる範囲(「クリアランス」)をあらかじめ免震ピット内や地上部に設けておくこと、さらに建物から基礎につながる設備配管にも異なる動きに耐える専用の継ぎ手(「免震継手」)を使って施工しなければならない。
免震ピット

免震ピット

免震ピット内に入り組んだ配管

免震ピット内に入り組んだ配管

また建設の過程では、積層ゴムをいつまで固定し、いつから作動させるかといった工程上の管理や現場全体への徹底も重要。現に免震建物でもっとも多い問題として、揺れる範囲にモノを置くケースだそうだから、建物に携わる人すべてが免震の特徴を理解しておく必要がある。したがって、経験の数が大きくモノをいうのであって、実績のない設計会社や施工会社でも容易にできる工法ではないといえるだろう。今後免震マンションが広く普及していくには、多くの企業が実績を積み重ねていく必要がある。

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【撮影協力】
桜プレイス


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