地震に強い免震構造
免震は、建物を地盤から切り離し、その間にアイソレーター(免震装置)をはさむことで建物に伝わる揺れの加速度を1/2から1/3程度低減させる工法である。ほとんどのマンションが震動に耐える頑丈な「耐震」を採用しているのに対し、「免震」と「制震」はよりグレードが高い構造だとされているのだが、相当大きな揺れが生じない限り揺れを抑制する効果がはたらかない手法もある制震に対し、免震は震度1から装置が作動する点においてもっとも地震に強い工法であると認識されている。世界で一番最初に免震が導入された建物は、フランスの小学校で、その次は原子力発電所に使われたと記録されている。現在日本では総理大臣官邸や国立西洋美術館、JR東京駅舎にも採用されているほか警察署や消防署など「災害時の拠点」となるべき建物に導入されるケースが増えているようだ。国内では、阪神淡路大震災(1995年)を境に免震の効果に注目が高まり、現在ではおよそ3,000棟の免震建物が存在している。
東日本大震災でも免震の信頼性が再確認されたが、それを受けて大手デベロッパーの中には防災基準を見直す動きが活発化した。構造面では、三菱地所レジデンスが高さ60mを超えるタワー(超高層)マンションには原則免震か制震を採用するとし、三井不動産レジデンシャルに至っては今後すべてのタワーを免震にすると宣言。
免震マンションが急増するかと思われたが…
リーディングカンパニー2社が相次いで防災基準を見直したことで、さみだれ式に各社続くかと思われたが、予想に反し追随する動きは見られない。大手数社にヒアリングしてみたが、総じて「現場毎にどの構造手法が最適かを見極めながら判断したい」といった回答がほとんどだった。積層ゴム製造メーカー最大手のブリジストン社や大手ゼネコンでも、震災直後は「進行中のプロジェクトを耐震から免震へ変更可能かどうか打診がきている」といったように、免震の問い合わせが急増したという。しかし、それらは現実にどこまで免震化したのだろうか。