ワインとのマリアージュには一瞬の隙もない
ユカワタンではひと皿にグラスで一杯のワインの提供を目指している。信州の食材を使う料理に信州産のワインを主体としたパフォーマンスだ。信州の筍と信濃雪鱒のシャルロットには小布施ワイナリーのシャルドネ2009。ゴールデンキャビアをめがけナイフを入れた時に筍が生きているかのように飛び跳ねた。なんとも活きがいい。よりピュアを目指すシャルドネと純粋なまでに混じりけのない雪鱒のマリアージュが堪能できる。
ナイフを入れるのをためらう感覚に襲われる
フォアグラのポワレと合わせるワインはマンズワインのソラリス。シャルドネとリースリングを交配させた中甘口のワインで信州産ルバーブのコンポート、そのスープ状のソースの酸味と甘みが実にバランスがよい。この頃から料理とワインと空間が一体になる心地良さが緩やかに拡がっていく。
とろけるフォアグラに表現の言葉が見つからない
魚料理に合わせて出てきた鮎のコンソメは印象的な一皿だ。透明度を高く仕上げれば仕上げるほど出来が良いとされるコンソメ。手をかけつつ、シンプルに仕上げることは最も難しい。金の器に口をつけた瞬間に広がる鮎の風味はフランス料理の調理法のハズなのに日本料理のひと品にも感じられるくらい。
天竜川のせせらぎのようにワイングラスに注がれる透明の液体は水かと思いきやボトルを見ると「真澄 山廃純米大吟醸」の文字。ひと皿ひと皿にワインを楽しみ、続けざまにすらっと出てくると清酒も実に自然でワインのように感じてくる。皿から今にも泳ぎだしそうな稚鮎はまさに天竜川からの贈り物。ソースにはうるかを使用したタプナードがほろ苦く旨みを引き出す。
後姿はまるで泳いでいるかのよう
メインの肉料理にはユカワタン用に飼育された安曇野放牧豚のデクリネゾン。自然の寒暖の中で愛情をたっぷりかけられて育つ豚はストレスのない伸びやかな味、肉質である。一頭買いをするため豚肉の各部位をバラエティに富んだ料理ができ、軽めに仕上げられているジュ・ド・ポーは素材のよさを高める。セレクトされたワインは井筒ワインのメルロー。生産者とのキャッチボールを繰り返し、年に2~3回生産者がユカワタンに集まり、生産者自らが自分の育てた食材の行き先を知り、共有をし合う。生産者が食べに来たことがあるというこれこそ理想のレストランのあり方だ。
旨味の凝縮とはこういうことをいうのか