重要事項説明の内容は十分に理解したいものですが……
ところが、仕事の忙しい合間をぬって不動産業者の事務所へ行き、内心は「面倒くさいな」と思いながら説明を聞いていたり、あるいは何を説明されているのかもよく理解しないまま聞き流していたりする人も少なからずいるようです。
重要事項説明がどのような性格のものなのか、そして説明を受ける際にはどうするべきなのか、重要事項説明を受ける前にぜひ知っておきたいポイントをまとめました。
重要事項説明は、購入の最終意思決定のためのもの
宅地建物取引士による重要事項説明は、売買契約が成立する前の段階で行なうことが法律に定められています。これから購入しようとする物件のことや取引条件などに関する一定の重要な事項を説明し、契約に関するトラブルを未然に防ぐとともに、買主が契約の意思を決定するための重要な判断材料とすることが、その大きな目的です。
したがって、重要事項説明を受けたうえで納得できない部分などがあったり、物件の問題点が明らかにされたりすれば、売買契約を断ることは自由であり、何らペナルティはありません。新築物件などで購入申込金を支払っている場合でも、全額が返金されることになります。
だからといって何の理由もなく、ただ「買う気分じゃなくなっちゃった」で契約を断れば、不動産業者の担当者も対応に困ってしまいますが……。
契約を断るのであれば、その理由を明確にするためにも、重要事項として説明される一つひとつの内容を、しっかりと理解しておきたいものです。
重要事項説明は契約予定日の数日前に受けるべき!?
以前であれば、事前に買主へ書類を見せることもないまま売買契約の当日に慌ただしく重要事項説明を行ない、説明が終わったらそのまま休憩もせずに売買契約締結の段取りに進むことが、ごく一般的でした。ところが、これでは何らかの問題点があっても、買主が買うか買わないかの判断をする時間的な余裕がありません。
とくに売主がその場に同席していれば、契約を断ろうかと迷ってもなかなか言い出せないケースが多いでしょう。不動産業者の立場からすれば、そこが狙いでもあったわけです。
しかし、近年はそのようなやり方が徐々に改められ、契約の数日前に重要事項説明を行なう、あるいは事前に重要事項説明書の写しを買主に渡してじっくり目を通してもらうといった対応をする不動産業者が増えてきています。
ある大手業者では社内ルールを定め、新築物件の場合には3日前までに重要事項説明書の写しと詳細な解説を記載した「ガイドブック」を購入申込者に渡したうえで、重要事項説明をしてから2日目以降に売買契約を実施する、中古物件など媒介の場合には重要事項説明に先立って3日から1週間前に「事前説明」を実施する、としているようです。
同様の事例は他の不動産業者にも広がっていくでしょうが、残念ながら従来と変わらず、売買契約の当日にいきなり重要事項説明書を見せて説明するだけといった業者もあるでしょう。
新築か中古かに関わらず、売買契約の申し込みをしたときには、まず日程の段取りを確認し、契約予定日よりも前に重要事項説明をしてもらうこと、または少なくとも重要事項説明書の写しを事前に渡してもらうことを自ら要求するべきです。
なお、主に中古住宅の売買のとき、重要事項説明をする際には売主も同席したほうが疑問点の確認や新たに生じた問題点への対処がしやすい、あるいは売主も説明の内容をきちんと把握しておくべき、といった考え方にもとづいて、売買契約当日の重要事項説明を原則としている不動産業者もあります。
そのような場合でも、事前に重要事項説明書の写しを求めることは何ら問題なく、できるかぎりそうするべきであることに変わりはありません。
重要事項説明のなかでも大事なのは特記事項
重要事項説明書には数多くの項目があり、どれも大切な内容です。ところが物件によって該当する項目は異なり、「該当なし」という記載ばかりが目立つこともあるでしょう。あらかじめ規定された項目についての詳細な解説は、≪重要事項説明書のポイント≫ をご覧いただきたいのですが、とくに注意しておきたいのは最後に「特記事項」として書かれた内容です。もちろん、何ら特別な要素がない物件であれば特記事項の記載がない場合もあります。
特記事項は、建物に関することだけでなく、敷地や隣地関係あるいは周辺環境などで生じている問題点などがある場合に記載されます。
その内容も軽微なものから重大なものまでさまざまですが、買主に対して問題点の事実関係を説明すれば足りるため、それに起因して将来的に予測される(まだ起きていない)事態や、その問題点の解決策などには言及されていないことが大半です。
何らかの問題点がある場合には、その内容を聞き流すだけではなく、将来的なことも考えたうえで、自分自身が納得できるまで十分な説明を受けることが欠かせません。書類に記載されていないことを断定的に説明されたら、その内容をしっかりとメモに残しておくことも必要です。
重要事項説明の対象として法で規定された項目が多過ぎるため、これを簡素化しようという議論も一部にあるようですが、トラブルの要因となりやすく本当に重要なのは、むしろ「法で規定されていない項目」だといえます。それが記載されているのが「特記事項」の欄です。
重要事項説明書には記載されない内容もある
重要事項説明の対象としてあらかじめ規定された項目が多岐にわたり、これに該当しないものについては特記事項に記載されるとはいえ、物件に関することが何もかもすべて説明されるというわけではありません。たとえば、一般的に嫌悪施設とされるものが近くに存在すれば説明されますが、それが人によって好き嫌いの分かれるもの、ある人は嫌だと感じ、ある人はまったく気にならないというようなものであれば、必ずしも説明されるとはかぎらないのです。
眺望や環境など、主観に左右されやすいものの場合も同様です。窓から見える何か特定のものが気に入って物件の購入を決めたとしても、その意思を明示しなければ宅地建物取引士や営業の担当者には分かりません。
したがって、その特定のものの眺望が将来的に遮られることが分かっていたとしても、重要事項説明の対象とされないことがあるでしょう。
何が重要で、何が重要でないのかの取捨選択は、宅地建物取引士の主観によらざるを得ない面が多いのも実情です。「これがあったら嫌」「これがなければ困る」といった自分自身が物件に求める条件については、事前にしっかりと意思表示をしてよく調べてもらうことも大切です。
何か問題があれば重要事項説明で明らかにされるはずだから、という思い込みや希望的観測で判断せず、場合によっては自ら物件現地周辺などを調べてみることも必要です。
重要事項説明を受けるときは十分に落ち着いて
不動産の売買に関するトラブルに遭った人の話を聞くと「重要事項説明を受けた記憶がない」ということが多いようです。ところが売買契約時の書類を確認してみると、ほとんどの場合は重要事項説明書には「説明を受けました」という本人の署名押印が残されています。つまり、買主が過度に緊張してしまったことなどが原因で、重要事項説明を受けたことすら覚えていないケースが多いのでしょう。
慣れない高額の契約を前にして「緊張するな」というほうが無理でしょうが、過度に緊張すれば重要事項説明の内容がなかなか飲み込めなかったり、疑問点があってもうまく聞くことができなかったりすることにもなりかねません。
重要事項説明を受けるときには、できるかぎり緊張を解き、心を落ち着かせるようにしたいものです。そのためには、上で説明したとおり事前に書類を受け取り、説明を受ける前に予習をしておくことが少なからず役立つでしょう。
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