異常な値上がりとそれでも売れるマンション
新築マンションの分譲価格が驚くほど上がった地域がある。東急東横線の「武蔵小杉」駅だ。2006年に販売された「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」は坪単価@238万円。それが、現在分譲中の「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」は同@291万円。2本のタワーは同じ駅前再開発エリア内にもかかわらず、価格が6年間で22%も値上がりした計算に。しかも、1棟目の「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」は47階建て。それに対し「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」は38階建て。つまり実質的な上げ幅は見た目以上に大きいということだ。今月おこなわれた「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」第1期販売は総戸数507戸のうち300戸を売り出した。全戸に369件の登録が入ったという。最多価格は5,500万円と5,700万円。最高倍率は10倍(7,510万円<15階>の住戸)。業界用語でいうところの「ソッカン」(即日完売の意味)である。この戸数の多さと売れ行きには正直驚いた。@291万円といえば、都心の湾岸エリア(豊洲~東雲)さえもはるかに上回る価格である。
それに、昨年来タワーマンションを不安視する声はいまだ消え去っていないのも事実。とくに「エレベーターと水」。停電時の不便さと不安は完全に払しょくされていないはずだ。現に、タワーマンションの販売現場では揺れ幅が拡大しやすく、かつ階段での上り下りが困難な上層階の売れ行きがいまひとつ鈍いと聞く。価格表を見れば、階毎の価格差は相当に縮小しているよう。「見下ろす優越感」に対する換金率は相対的に下がってしまっているのが現実だ。
市場の拡がり
異常なほどの値上がり。そして、“それでも売れる”タワーマンション。これは単に「駅前再開発」だけでは説明がつかない。都心を上回る値段で、なぜこれほどまでに売れるのか。「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」販売所長の坪井氏は、その質問に対して開口一番こう答えた。「JR新駅の効果は予想以上。過去の*2棟ではあまり見なかった「藤沢」や「戸塚」といった横浜以遠のJR沿線の来場者が増えました」*「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」と「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」2006年分譲。JR横須賀線の「武蔵小杉」新駅ができたことで「新宿」や「東京」、「品川」にもダイレクトにつながった。「厳密にいえば、このマンションは3駅9路線。直通している東京メトロ日比谷線、南北線、都営三田線、みなとみらい線などが加わるためです」(同)。交通インフラの再整備が市場の広がりをもたらしたとすれば、東急東横線の副都心線と東武東上線の相互乗り入れ(つまり近い将来11路線に!)もさらなる期待を含んでいるということか。
加えて、東急東横線の「田園調布」~「日吉」駅の区間は目黒線と並行しているのだが、この目黒線の新設(2000年)と延伸(2008年)効果も見逃せない。世田谷・目黒からの来場がそれまで以上に増加しているのではないかと推測する。この現象は「ザ・パークハウス日吉」(2012年6月完売)でも顕著だった。つまり、武蔵小杉駅はいくつもの利便性向上策の相乗効果が最大限に発揮されるポジションなのだ。