ブルガリア正教会の総本山、世界遺産「リラ修道院」

白黒と紅白のストライプが鮮やかなリラ修道院の聖母教会

白黒と紅白のストライプが鮮やかなリラ修道院の聖母教会。リラ修道院自然公園の山々とのコントラストが美しい

ブルガリア正教会の総本山リラ修道院は、イスラム教徒による500年にわたる支配の間、人々の信仰を支え続けたブルガリア人の心のよりどころ。

周囲を城壁で囲い、要塞のような堅牢さを誇る一方で、ストライプの外観と極彩色の内装を持つ教会はとてもキュートで素朴。他に例のない不思議な空間だ。今回はそんなブルガリアの世界遺産「リラ修道院」を紹介する。

地獄絵図を思わせるリラ修道院のフレスコ画

列柱廊のフレスコ画

天井・壁・柱・ドーム・梁を隙間なく埋め尽くす、聖母教会・列柱廊のフレスコ画

剣を持って悪魔と戦う大天使ミカエル

剣を持って悪魔と戦う大天使ミカエル

ローマ帝国の下でヨーロッパ中に伝わり、大航海時代に世界中に広がったキリスト教。まだ活版印刷が存在せず、識字率も低かった時代、『旧約聖書』や『新約聖書』、聖人たちの物語は大聖堂や教会を彩る彫刻や壁画、ステンドグラスに描かれ、人々の信仰心をあおった。

大聖堂や教会は世界中で見てきたが、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂やフィレンツェのドゥオーモ、パリのノートルダム大聖堂に代表されるように、アーティスティックなデザインと神秘的な光の演出で、神を華麗かつ重厚に描き出すものが多かった。

でも、リラ修道院はまったく違う。

 

悪魔をこらしめる天使と聖職者

悪魔をこらしめる天使と聖職者

たとえば色使い。聖母教会の壁や天井一面に描かれたフレスコ画は天然色を多用した極彩色。極めて平面的な絵だが、その色使いのために浮世絵のようなビビッドな魅力を引き出している。

そして絵の内容がまた異様。もちろんイエスや12使徒がその中心を飾ってはいるのだが、その周囲には百鬼夜行に出てくる餓鬼やキングギドラのような龍、ユニコーンのような一角獣や人を飲み込む怪魚まで描かれている。まるで仏教寺院の地獄絵図やギリシア神話の英雄譚のようだ。