セクシュアルマイノリティ・同性愛/ゲイライフ

ゲイにとってクラブとは?(3ページ目)

今回は、ゴトウの個人的なクラブとの関わりの物語を軸に、ゲイシーンにおけるクラブの意味について書きました。クラブはゲイカルチャーの中心であり、コミュニティのお祭りの開催地であり、パレードやHIV予防啓発にも貢献してきた、ゲイにとってなくてはならない場所だということを、お伝えしたいです。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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クラブは人の命をも救う

レインボーマーチ札幌

札幌のパレードの前夜のクラブパーティ。本当にみんな生き生きしてる。輝いてる!

そもそもクラブに行ったことがない…という方のために申し上げますと、みんなクスリをやってラリっているとか、何かいやらしい(乱交みたいな)ことをしているとかいうイメージは、断言しますが、全くの誤解です(もしかしたら、クスリで捕まったある歌手の方がクラブで激しく頭を振っている映像を見て「こんなにヤバいんだ…」と思った方も多いかもしれませんが、全然違います)。ゲイクラブでは、オネハと呼ばれる歌モノHOUSEがかかると、みんなで手を上げて(合唱して)踊ってたり、アイドルの曲がかかると、みんなで振りまねして踊ったり(AKBとかPerfumeとか)、そういうとってもラブリー&ピースフルでキラキラした、ハッピー感に包まれた空間です。ドラァグクイーンのショーを見てウットリしたり、ゲラゲラ笑ったりもします(ノンケさんでも見たことある方、多いと思います)。キモチをオープンにして、いろんな人とフレンドリーにお話して友達になり、楽しい時間を過ごせるのです。そうして朝方、楽しかったね!と言って、バイバイ!って笑顔で帰って行くのです。暴力沙汰なんて考えられません(この15年間、何百回とクラブに行きましたが、本当に一度も見たことがありません)。満員電車なんかよりはるかに安全で健全です(満員電車状態になることはありますが…笑)

仙台のゲイナイト

仙台唯一のゲイナイトは、HIV予防啓発団体が主催しています。震災後は東北のゲイたちを勇気づけました

たぶんですが、ゲイたちがクラブに集まってみんなでいっしょに踊るのは、村人たちが年に一回集まってみんなで盆踊りを踊って交流を深める(絆を強める)のと同じです。コミュニティのお祭りなのです。そして、ドラァグクイーンがクラブのステージで華麗なダンスを披露し、お客さんを楽しませるのは、常磐ハワイアンセンターのフラガールと同じです。町おこしのためのエンターテイメントなのです(そういうドラァグクイーンはノンケさんからも拍手喝采を浴びるようなクオリティを誇り、今や、町おこしレベルを超えて、TVでも活躍するようになりました)

クラブというのは基本的に22時とか23時からスタートして朝までやってます(そういうものです。世界標準です)。そうじゃないと、クラブとして成り立たないのです(歌舞伎の公演も2時間だけに限定されたら成り立たないですよね?)
ところが最近、全国のクラブの摘発が相次ぎ、24時以降のダンスが禁止されるという事態になっています。

もし、クラブで24時以降踊るのを禁止されてしまったら、どうなるでしょう? 誰もイベントをやらなくなり、クラブが存続できなくなってしまいます。クラブがなくなったらどうなるでしょう? 日本から世界に文化を発信していくどころか、クリエイティブなカルチャーのある大きな部分をまるまる失ってしまうことになります。そして、多くの人たちの生き甲斐や、生きる勇気や、楽しみや、創造的な営みや、幸せを奪ってしまうことになります(僕らもそうです。僕はドラァグクイーンをやってますし、ダンナはDJをやってますから)。ある種のセーフティネットとして機能していたクラブがなくなることで、おそらく今後、ますますゲイ・バイセクシュアル男性の人たちは世間の同性愛嫌悪の呪縛から逃れられなくなり(自己肯定感を得られず)、自暴自棄な性行為に耽り、HIV感染も増えることでしょう。それ以前に、自殺を考える人も多くなることでしょう。全人口の数%にあたる貴重な若い人たちの命が脅かされる…そんなことがあってよいのでしょうか。

ゴトウはそういう気持ちで、風営法が改善されることを心から願っています(『フラガール』で「踊らしてくんちぇ!」と泣いて懇願するしずちゃんのような気持ちです)。坂本龍一さんはじめ、多くの方が呼びかけている「Let's DANCE ダンスカルチャーを守るために、風営法の改正を求めます」という署名運動に賛同するものです。

震災以来、日本(の上の方にいる人たち)は、ひとびとの暮らしや命を最優先にするのではなく、苦しむ人たちを見捨て、ひとびとの自由や楽しみを奪う国にどんどんなっていっているように感じます。今、この運動が成功すれば、きっとクラブのことに限らない、大きな「物語」が動きはじめる、そんな気がします。

※この記事は、決して署名を強要したり、プロパガンダを趣旨とするものではありません。後藤純一の私的な思いを綴ったものです。
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