起業・会社設立のノウハウ/事業計画書・ビジネスプラン

士業で起業・独立開業するノウハウ(2ページ目)

多くの起業相談を受ける中、最近、同業者である士業の方からの起業・独立開業相談が増えています。内容としては総じて、方向性や独立への不安、集客方法などについて。資格さえ取得してしまえばメシを食えないことはないというのは過去のこと。生き残りを賭けた価格競争が激しさを増す中、不安を持つ方が多いのも当然でしょう。今回は、士業で起業・独立開業するノウハウを公開していきます。

中野 裕哲

執筆者:中野 裕哲

起業・独立のノウハウガイド

競合分析

競合分析により見えてくるものもある

競合分析により見えてくるものもある

コンセプトが決まったら、具体的なサービス内容や価格を決めたいところですね。その前に、同じ市場で競い合うライバルのことも調べておきましょう。

ひとまずWeb上だけでも構いません。似たようなサービスを提供しているライバルについて、サービス内容、価格、対応エリアなどをなるべく多くチェックします。一通りの情報収集をしたら、項目ごとに比較表として書き出してみることをオススメします。いろいろな傾向やそれぞれの強み、弱み、誰も提供していないことなどが見えてくるはずです。


具体的なサービス内容と価格の設計

競合分析が終わったら、実際にあなたがこれから提供するサービスについて、具体的な内容を検討していきましょう。その際には、以下のマーケティング戦略的な商品、サービスの分類が大切です。分類ごとにどのようなサービスを提供できる可能性があるか検討してみましょう。

1. フロントエンド商品
フロントエンド商品とは、ターゲット層から見て魅力的な集客用の商品です。例えば、メガネ屋さんでいえば、入口から入ってすぐに置いてあるような3000円くらいの格安メガネです。士業の場合、低額のセミナーや相談、低額のスポットサービス、成功報酬のサービスなどが該当します。

2. バックエンド商品

バックエンド商品とは、利幅が大きく、これが売れないと全体としての利益が出ないというような主力商品です。メガネ屋さんでいえば、奥の方に並んでいる4~5万円のブランド物のメガネです。士業でいえば、定期的な顧問契約、毎月あるいは毎年依頼されるようなサービスなどがこれに該当します。

3. 無料オファ
無料オファーとは、ターゲット層に初めてのコンタクトをしてもらいやすいように、価格という壁を取り払って無料にまで踏み込んだサービスです。メガネ屋さんでいえば、店頭においてあるメガネ洗浄機やネジがゆるんだときに親切に無料で直してくれるというようなサービスです。士業でいえば、無料相談、無料セミナー、無料レポート、無料小冊子などがこれに該当します。

■契約までの導線を検討する
3区分のサービスを検討してみたら、次にどのような導線でバックエンド商品の契約をしていただくか検討しましょう。基本的な導線は以下のようになります。

1. まずは無料オファーをお申し込みいただく。その中で、サービスの良さや需要、人間的な信用などを感じていただく。

2. 無料オファーを体験していただいた方に、フロントエンド商品を紹介し、契約していただく。

3. ここまでで培った人間的な信頼関係や提供した仕事のクオリティをベースとして、バックエンド商品を契約していただく


売上の安定を考える

具体的なサービス内容を検討する際には、もうひとつ、意識しておくべきことがあります。フロー型かストック型かということです。士業の売上にはこの2種類があり、売上の安定にも影響します。

■フロー型
流動的な売上。士業でいえば、スポットで依頼されるような仕事です。

■ストック型
月々安定して上がる売上。士業でいえば、顧問料や毎月、毎年依頼されるような仕事です。

士業の事務所の売上を考えた場合、ストック型売上の割合を増やすことができれば、売上は安定することになります。逆に、フロー型売上の割合が多い場合、月によって売上が安定せず、また常に集客や広告宣伝にお金や労力を費やしていなければならない可能性があります。

この2つについて、ひとつシミュレーションをしてみましょう。

A フロー型売上のみ
毎月1件、50万円のスポットの仕事を依頼されるケース
B ストック型売上のみ
毎月1件、新規の顧問先(毎月の顧問料5万円)を獲得できるケース
として5年間の売上をシミュレーションしてみます。
(解約は1件もないものとします)

A フロー型売上のみ
1年目 600万円
2年目 600万円
3年目 600万円
4年目 600万円
5年目 600万円

B ストック型売上のみ
1年目 390万円
2年目 1110万円
3年目 1830万円
4年目 2550万円
5年目 3270万円

このようにシミュレーションをしてみると、ストック型売上を取り入れることができれば、売上の安定には理想的だということがわかります。

提供するサービスの内容を検討する考える際には、ストック型のものを入れることができないかも検討してみることをオススメします。また、フロー型売上を継続的にリピート依頼していただくことによってストック化できないかもあわせて検討しましょう。


集客方法を考える

コンセプトやターゲット層、具体的なサービス内容や価格が明確に決まったら、どのようにして集客していくかも検討しなければなりません。士業の典型的な集客方法としては、飛び込み営業、人脈営業、DM、チラシ撒き、自分のホームページやブログ、SNS、ポータルサイト、セミナー、書籍、紹介営業などの方法があります。

このうち、昨今では、やはりホームーページ、ブログ、SNS、ポータルサイトへの登録など、Webからの集客がより重要になってきています。ガイドの場合も集客の9割ほどはWeb経由です。

士業のWeb集客で重要なポイントは以下の5点です。

1. コンセプトに合ったページ作り
ホームーページやブログを制作する際には、必ず、自分で決めた理念やコンセプトに合ったものを作成しましょう。漫然と○○事務所というタイトルのものを作成するのではなく、理念、コンセプトやあなたの尖った強みや魅力的なサービス内容を前面に出したものを作成することをオススメします。

2. 露出度を高める
どんなにすばらしいホームーページやブログを作成しても、ターゲット層に訪れていただくことができなければ集客にはつながりません。作成時点からSEOを意識して作成し、その後もSEOやリスティング広告によって、web上での露出度を高めましょう。

もう一点、露出度を高める戦略として、専門家に相談できるポータルサイトに登録するという方法もあります。例えば、All Aboutプロファイルでは、プロフィールやサービスの掲載の他に、セミナー情報の掲載、コラムの執筆などが可能です。ユーザーからの直接相談や問い合わせを受けることも可能です。ガイドも登録しています。

3. オファーしやすい雰囲気作り
いくら露出度を高めても、ターゲット層に実際にオファーしていただくことができなければ意味がありません。サイトを作成する際には、オファーしやすい全体の雰囲気作りを目指し、オファーしやすいバナーを配置するなど工夫しましょう。

また意外かもしれませんが、Web上の顔写真は重要です。士業の人に初めてコンタクトを取る依頼者にとっては、敷居が高く怖い印象を持っていることが多いものです。そのハードルを下げるためにも、写真館で素晴らしい笑顔の写真を撮影してもらうことをオススメします。

4. 口コミ
ネットショッピングで家電や本を買うにも、宴会をする場所を探すにしてもweb上の口コミや他の人の評価を気にする時代ですよね。多くの士業の中から誰に相談、依頼するか選ぶ際にも口コミは重要になってきています。ホームーページなどにもクライアントからの推薦文などを掲載できないか検討してみましょう。

5. 品位

当然ながら士業としての品位を落とすような広告戦略をしてはいけません。これは大事なことです。自分さえ集客できれば良いということではなく、その士業に対する世間の信用やイメージを損なうようなことになっていないか、充分に注意しましょう。


ジョイントベンチャーを検討する

士業の集客方法で、もうひとつ取り入れたいのが、ジョイントベンチャーです。ジョイントベンチャーとは、共通のターゲット層に対して、異なる得意分野を持つ者同士が協業してサービスを提供すること。他の士業やコンサルタントと組んでも良し、あなた自身が尖った得意分野を表明したのなら、それとズレた得意分野を持つ同業と組むも良し。組み合わせは無限大です。

お互いに送客することにより集客に役立つばかりでなく、ソリューションメニューが増え、クライアントにも喜ばれます。ビジネス上で出会った人と、ジョイントベンチャーができる要素がないか、常に意識していたいですね。

ただ、金銭を伴う紹介行為を行う者や資格を持たないブローカーと提携するなど、各士業で禁止されていることだけは行わないよう、充分に注意してください。

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