世界遺産/アジアの世界遺産

昌徳宮/韓国(3ページ目)

ソウル五大王宮の中で、昌徳宮はもっとも長きにわたって王が暮らした宮殿だ。他の王宮と違い、丘や岩・木々など自然の地形をそのまま活かした情緒あるデザインで、多くの王を癒やし、愛された。今回は朝鮮王朝時代の文化をもっともよく残す韓国の世界遺産「昌徳宮」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

昌徳宮の建造物と見所2 後苑

芙蓉池と芙蓉亭

芙蓉池に突き出した芙蓉亭。一時は瑛花堂で科挙の試験を行い、合格者を芙蓉亭でもてなしたという

長らく一般人立入禁止の秘苑とされていた王の庭園が、28棟の建物が残る後苑だ。ここではエントランスで支払ったものとは別に、もう一度入場料を支払ってツアーに参加する必要がある。

■芙蓉池(プヨンチ)
四角い池の中に丸い島を置いた池。これは天を円、地を四角とみる陰陽五行の「天円地方」の考え方から来ており、両者の調和を表している。このような池は宗廟などでも見ることができる。

■芙蓉亭(プヨンジョン)
芙蓉池に突き出した建物で、池に逆さに映る姿が花に見えるように設計されたといわれる。その近くにあるのが瑛花堂(ヨンファダン)で、ここで王が詩を吟じていたという。

■宙合楼(チュハムヌ)
22代国王・正祖が建てた図書館・学問所で、芙蓉池から丘を登り、魚水門をくぐった先にある。円柱と四角柱の柱があり、これも天円地方を示している。

■不老門(プルロムン)
不老不死を示すために石で造られた門。ここをくぐると長生きできるという噂が残っている。

■演慶堂(ヨンギョダン)
韓屋のような建物で、実際民間の家を模して建てられている。王はここで庶民の生活を体験したという。門も住居も男性用と女性用に分かれている。

このように、後苑では随所に天円地方の思想を見ることができる。天円地方は中国でもよく見られ、たとえば紫禁城の南にあって皇帝が天と交信を行う天壇(世界遺産)は円形に、紫禁城の北にあって地の神を祀る地壇は四角形に造られている。

しかし昌徳宮では天と地を同時に祀る。天と地の調和が強調されているのがよくわかる。
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