未完の経験はいつまでも記憶に残りやすい
「あと少しでできたのに!」という課題は忘れにくい
しかし、失敗ばかりの人生なんてありえません。現にこうして今を生きているだけで、いくつもの困難や挑戦に打ち勝っているはずなのです。ただ、やり遂げられた体験は忘れやすく、やり残した体験はいつまでも記憶に残りやすいだけのこと。これを「ツァイガルニク効果」といいます。
ツァイガルニク効果は、旧ソビエト連邦の心理学者ツァイガルニクが行った、未完の課題と完遂した課題に対する記憶の差に関する実験結果から名づけられた心理学用語です。
未完の記憶があるから人は向上する
たくさんおもちゃを買ってあげているのに「いつも買ってくれない」と泣くのはなぜ?
ささいな例ですが、子どもにおもちゃを買ってあげると、喜びも買ってあげたおもちゃもすぐに放り投げ、しばらくして「いつもおもちゃを買ってくれない!」と不満を言ってきたりします。学芸会で「上手にできたね」とほめられたことは忘れてしまっても、マラソン大会でリタイアしたことは忘れない、という人も多いと思います。
また、志望校に合格すると喜びも受験の苦労も忘れてしまうものですが、失敗した人は、いつまでもその屈辱をいつまでも覚えているもの。苦労せずに希望の会社に入社できた人は、就活への印象も薄いものですが、入社できなかった人は、いつまでもその記憶が頭から離れないものです。
このように、人の心には達成したことは忘れやすく、達成できなかったことの方が記憶に残りやすいという特徴があります。もちろん、それは必ずしも悪いことではありません。未完の記憶は自分を向上させ、同じ失敗を回避するために必要なものでもあると思います。未完の記憶が強く残っているからこそ、「次こそ達成しよう」と意志を強くしたり、失敗を回避するための知恵を働かせることができるのではないでしょうか。