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中国の住宅バブル事情/なぜ、バブルは発生したか?(2ページ目)

2010年には日本のGDPを抜いて、世界第2位の経済大国となった中国。その中国では09年から住宅価格が急騰し、あたかも「バブル」のような様相を呈しています。実は、こうした価格高騰の背景には2つの理由があり、かつての日本を思い出させます。一体どのような理由だったのか、そしてバブルの結末はどうなったのか?―― 今回は<前編>と<後編>の2部構成で、中国の住宅バブル事情をお伝えします。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

積極的な金融緩和と過剰流動性の高まりが、中国を「住宅バブル」へと押し上げる 

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バブルとは「泡」のこと。実態を伴わない、虚構の経済がバブルだ。

ここで、バブル経済とはどういう状態を指すのか?―― 確認のため復習しておきましょう。

バブルとは簡単に言えば、資産価格が賃料や金利といった経済の基本動向から大幅に乖離(かいり)して価格形成される現象をいいます。たとえ住宅価格が急騰したとしても、金利や賃料も同じような上げ幅で上昇していれば、両者間には大幅な乖離は発生しません。バブルとはその言葉通り、「泡」のように資産価格だけが大きく膨張する状態を意味します。

さて、こうした住宅バブルが、なぜ中国で発生したかというと、金融当局による金融緩和の影響が一因として挙げられます。世界的な金融危機による景気不透明感の高まりに対応すべく、一連の景気刺激策の中で金融当局は銀行に対して融資拡大を奨励しました。金融機関の預金・貸出金利を数度にわたって引き下げ、また、これまで商業銀行に対して設定していた新規貸出額の上限(貸出総量規制)を撤廃して融資枠を拡大し、資金融通に柔軟性を持たせました。

その結果、非常に緩和的となった金融環境を背景に、銀行貸出は急増しました。過剰流動性が高まり、投資資金が不動産市場へと流入したことで、住宅価格は急騰していきました。かつての日本を見ているかのようです。

戸籍制度の改革に着手し、農村部から都市部への人口移動を条件緩和させる 

そして、2番目の上昇理由としては農村部から都市部への大規模な人口移動が挙げられます。急激な経済成長に伴う人手不足を補うべく、政府が政策的に農村余剰労働力を都市部の第2次・第3次産業へと移動させました。

中国は、これまで戸籍を都市部と農村部で峻別(しゅんべつ)し、都市部から農村部への移動制限はしない一方、その逆(農村部から都市部への移動)は厳しく制限してきました。つまり、農民を事実上、都市に移動させなくしていたのです。

しかし、都市と農村の一体的な発展の推進を実現すべく、その後、前向きに戸籍制度改革を試みるようになり、また、都市部では旺盛な建設ラッシュによる人手不足といった都市側の事情も相まって、中国政府は農村部から都市部への人口移動を緩和させていきました。

その結果、都市部への人口流入が新たな住宅需要を生み出し、地価の上昇圧力へと結びついていきました。2000年には約36%だった都市化率(総人口に占める都市人口の比率)が、2009年には約47%まで拡大しています。これまでの政策を180度転換し、「投資と輸出依存」から「内需主導の成長パターン」へと大きく舵を切り、内需の柱である住宅投資の活性化にも力を入れるようになりました。

まとめると、中国がバブル的な住宅価格の高騰を招いた要因は大きく2つに集約できます。

  1. 新規貸出額の上限を撤廃して融資枠を拡大し、資金融通に柔軟性を持たせた
  2. 農村部から都市部への人口流入が新たな住宅需要を生み出し、地価の上昇圧力へと結びついていった

グローバル経済における中国の存在感が高まるなか、同国の不動産価格の動きは世界中が注目しています。資産バブルを経験した日本にとっては、なおさら成り行きが気になります。その後、中国は加熱した住宅バブルをソフトランディング(軟着陸)させるべく、数々の対策を打ち出しました。一体どのような抑制策で、その抑制策により“バブル退治”はできたのか?

 この続きは、後編(↓)でお伝えします。

【関連コラム】
<前編> 中国の住宅バブル事情/なぜ、バブルは発生したのか? (本コラム)
<後編> 中国の住宅バブル事情/バブル崩壊を回避させた秘策とは?


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