「ピグマリオン効果」で伸びていく若者たち 

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期待された人ほど実力が伸びるわけとは?

新期が始まり、フレッシャーが学校やオフィスにあふれる季節。

4月はまだまだ場慣れ、人慣れに忙しい時期ですが、それが落ち着くと自分の実力や周囲の評価が気になり、急に不安になってしまうものです。

そんな子どもや若者たちを育てる親や教師、上司は、どんなことを心がければいいのでしょうか?

期待をされた人ほどその通りの成果を出せる、という説があり、それを「ピグマリオン効果」といいます。これは、60年代、米国の教育心理学者ローゼンタールが説いた説です。

ローゼンタールは、ある学校の小学生に知能テストを行い、そのなかから無作為に数名の生徒を選んで、「この子たちが伸びる」と偽りの情報を教師に伝えました。それを信じた教師が、その子たちを期待をこめて指導したところ、本当にぐんぐん成績が伸びていったというのです。

ピグマリオンは、ギリシャ神話の登場人物、キプロスの王の名です。ピグマリオンは、自分で創作した彫像の女性を愛してしまい、妻にしたいと熱心に願っていました。すると、その熱心さを見た愛と美の女神アフロディテが、人形を本物の女性に変え、王の夢を実現させてくれたという寓話があります。

家庭や学校、職場、塾やスポーツクラブなどでも、「君はこんないいところがある。だからきっと伸びていくよ」と応援されてきた人ほど、ぐんぐん能力を伸ばしていく例をよく見聞きすると思います。相手の可能性を信じ、「必ず伸びる」と応援してあげれば、本当にそのとおりになる――私自身、カウンセリングの場で、こうしたピグマリオン効果をたくさん見ています。

ダメ出しの言葉で可能性が奪われる「ゴーレム効果」 

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「お前はダメ」と言われ続けると本当にダメになってしまう・・・・・・

反対に、期待されないで「お前はダメだ」と言われ続けていると、その言葉通りに成績が下がったり、能力が落ちてしまうことがあります。これを「ゴーレム効果」と呼びます。

ゴーレムとは、ユダヤの言い伝えに出てくる泥人形の怪物の名です。呪文によって動くゴーレムは、主人の意のままに操られ、何でもこなすことができるのですが、額の護符の文字を一つ消されただけでただの粘土に戻ってしまいます。「ゴーレム効果」は、この寓話を比喩的に使った心理学用語です。

「この程度の成績しかとれないダメな子」
「運動神経が鈍いんだから、練習したってムダ」
「お前はたいした学歴もない凡人」
「こんな時代なんだから、努力したって夢がかなうはずがない」

学校でも職場でも家庭でも、私たちの周りには、こんなネガティブなメッセージがあふれすぎています。怪物ゴーレムが護符の文字を一つ消されただけで「ただの泥」になってしまったように、私たち人間もこんなネガティブなメッセージを一つかけられるだけで、自信が消えて「ただの人」になってしまいます。

ピグマリオン効果を受けて能力を開花できた人などほんの少しで、ゴーレム効果で育てられてきた人の方が圧倒的に多いのが現実なのかもしれません。

それは、親や教師、上司などの指導者世代がピグマリオン効果を体験していないからではないでしょうか。自分自身がほめられていないと、相手の可能性を信じ、認める言葉など言えるはずがないのです。

とくに現代の若者に、自信がなく元気がない子が多いと感じるのは、この世代の親自身がバブル崩壊後に成功体験を持ちにくくなったことで、自信を失い、無意識のうちに子どもに発する言葉がネガティブになり、ゴーレム効果を生んでしまった例があるからなのかもしれません。

言葉一つで、人は変わる 

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若者を伸ばすために親、教師、上司ができることとは?

たしかに、ほめそやされるばかりでは、スポイルされてしまいます。だからといって、「どうせダメだ」とけなされて育ったら、完全に自信を失ってしまいます。

本来、自己が確立していない子どもや若者は、みな自分に自信がなく、不安なのです。だからこそ、親や指導者から「あなたには必ずいいところがあるよ」「ここを伸ばせば必ずうまくいくよ」、こうした言葉をかけられ、信じてもらうことで、自分の可能性を信じ、自分を伸ばしていくことができるのです。

ピグマリオン効果を受けてきた子も、ゴーレム効果を受けてきた子も、元は同じ程度の素質の持ち主だったのに、親や指導者の声のかけ方一つで、その素質の生かし方が変わってしまったのかもしれません。

言葉一つで、人は変わります。次世代を担う子どもや若者たちに社会で活躍してもらうためにも、ぜひ相手をポジティブに見て、自信を持たせる言葉のかけ方を意識していきませんか?
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