旧耐震の小規模マンションは現在3,200棟(23区)
現在の耐震基準は、1981年(昭和56年)の建築基準法改正で定められた。それ以前に建てられた建物を「旧耐震」、以後のものを「新耐震」と業界では呼んでいる。阪神淡路大震災ではあらためて基準を満たすことの重要性が指摘され、旧耐震の改修を促すための法律(耐震改修促進法)が制定された。現在、東京都23区の旧耐震分譲マンションは約8,300棟にのぼるそうだ(旭化成調べ)。このうち総戸数30戸以下の「小規模マンション」が4割弱にあたる約3,200棟(同)。昨今大規模マンションが話題に上るが、小規模物件が意外に多いことがわかる。
マンションは規模のメリットをいかした都市型居住様式だが、築30年~40年を迎えた小規模な旧耐震マンションは、都心部の好立地にあることも多いそうだ。耐震基準を満たすための対処法にはどういった手法があるのだろうか。また小規模特有の事情とは?
小規模マンション特有の事情と課題
分譲マンションの管理運営は、何事も管理組合の総会決議にしたがって遂行される。大規模な改修や建て替えともなれば、区分所有者および議決権の過半数や5分の4以上の賛成が必要になる。したがって、一人の持つ比重が大きい小規模マンションは、少人数の反対で議案が否決されてしまうこともある。また都心好立地ゆえの1階部が店舗のような建物の場合、えてして全体に占める割合が高くなるオーナーの意見に他の区分所有者が引っ張られるようなことも珍しくないという。さらに、何をするにもそもそも人数が少ないために各人にかかる負荷が重く、推進のモチベーションを保つところからが重要なテーマになる。一旦意欲が低下してしまえば、連鎖反応を引き起こしやすく、悪循環に陥る可能性も高いといわれている。
予算上の問題も大きい。潤沢な剰余金に恵まれにくい小規模マンションは、例えば建て替え推進に携わるコンサルティングに払えるフィーも確保しづらい。だから、おのずと自力で活動していかざるを得ない。
そして、いざ建て替えをするとなっても、事業費を捻出する保留床の確保が容易でないのが小規模案件の特徴である。次のページでは、そんな難易度の高い小規模マンションの耐震化に対し、具体的な成功例をそのノウハウと共にご紹介しよう。