あなたのマンション、耐震改修工事はお済みですか?
その後も地震は頻発し、2003年の十勝沖地震(M8.0)、2004年の新潟県中越地震(M6.8)、そして2007の能登半島地震(M6.9)に新潟県中越沖地震(M6.8)と、さらに耐震化の促進が求められました。
にもかかわらず、国土交通省の推計によると住宅耐震化率は約79%(2008年時点)にとどまっており、2割の住宅が耐震不足の状態です。一見すると「8割近くも耐震化が進んでいれば心配ないのではないか」と思われがちですが、約4950万戸ある住宅ストック数の21%に相当する約1050万戸が十分な耐震性を有していない計算になります。安全・安心で豊かな住生活を支える生活環境の構築が求められる最中にあって、この現実(数値)を見過ごすわけにはいきません。
こうした事態に危機感を感じた(社)高層住宅管理業協会は3月8日、国土交通大臣宛てにマンションの耐震化の促進に関する要望書を提出しました。その内容は「経費の負担が多大な旧々耐震基準マンションの速やかな耐震化のためには耐震診断の義務化と耐震化工事に対する国の助成が不可欠であり、その実現のために前向きな検討をしてほしい」というものでした。確かにインセンティブがあれば、1つの動機付けにはなるでしょう。
ただ、いくら業界団体がお膳立てしたところで、肝心のマンション居住者が“重い腰”を挙げなければ前へは進みません。管理組合による合意形成なくして、工事の実施は不可能です。「戦後最大の危機」と評される東日本大震災(M9.0 )から1年が経過しました。もう先送りはできません。いまだ耐震改修工事がお済でない高経年マンションでは早急な対応が求められます。
耐震改修を実施するつもりはない 39.8% / 内閣府「防災に関する特別世論調査」
まずは耐震改修工事に関してどのような考えを持っているのか、内閣府の「防災に関する特別世論調査」から居住者の深層心理を探ってみましょう。<図表1>耐震補強工事の実施予定
・1年以内に実施する予定がある …………………………0.9%
・1年以内ではないが、実施する予定がある………………3.5%
・予定はないが、いずれ実施したい………………………25.7%
・実施するつもりはない……………………………………39.8%
・耐震補強工事実施済みなど、すでに耐震性がある……23.0%
この調査結果は2010年1月に公表されているため、東日本大震災の影響は加味していません。もし、震災後の調査であったならば結果も違ってきたのかもしれませんが、それにしても耐震補強工事の実施予定について39.8%の人が「実施するつもりはない」と回答しているのは驚きです(図表1)。
<図表2>耐震補強工事を実施しない理由 (複数回答)
・お金がかかるから ………………………………………50.6%
・必要性を実感できないから ……………………………22.1%
・集合住宅や借家などに住んでおり、
自分だけでは判断できないから ………………………21.1%
・効果があるか不明だから ………………………………14.2%
・どうやって着手・施工したらいいか分からない…………10.2%
・面倒だから ………………………………………………6.7%
・見た目が悪くなるから……………………………………1.2%
では、なぜ耐震補強工事を実施しないのか、その理由を尋ねたのが【図表2】です。大方の予想通り、2人に1人(50.6%)が「お金がかかるから」と答えています。その一方、22.1%の人が「工事の必要性を実感できないから」と回答しています。
17年前の阪神淡路大震災では、1981年以前に建てられた「旧耐震」の建築物に被害が集中したのに対し、それ以降に建設された「新耐震」の建築物は7割以上が軽微もしくは無被害となっています。耐震基準に適合させた住宅改修を行なえば、M7クラスの地震には対応できる耐力を付加することが可能なのです。もちろん、新耐震住宅が万能というわけではありませんが、相応の効果は期待できます。
耐震改修工事を後押ししたい国や地方自治体では、住宅の耐震改修の費用をサポートする制度を用意しています。最大の障壁であるコスト面に関し、「税制」「融資」「助成」による3つの措置で耐震診断と耐震改修を支援してくれます。こうした制度があるわけですから、活用しない手はありません。
そこで、次ページでは耐震改修工事に関する支援制度をご紹介します。