マンション管理/マンションの大規模修繕・建て替え

あなたのマンション 耐震改修工事はお済ですか?(2ページ目)

「南関東でマグニチュード7クラスの地震が今後4年以内に起こる確率は70%に高まった」――東京大学地震研究所の研究結果です。とてもショッキングなニュースですが、旧耐震のマンションにお住まいの皆様、ご自宅の耐震改修工事はお済みでしょうか。「お金がない」とか「必要性を感じない」とか言っている場合ではありません。今すぐアクションを起こさなければなりません。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

巨大地震による被害を教訓とし、日々、日本では建築物の耐震性能が強化される 

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東日本大震災を教訓に、住宅の耐震性能はさらに強化される

ご存じ、日本は世界有数の地震国であり、全世界の地震のおよそ2割が日本周辺で発生するほどの地震大国です。そのため、いくつもの巨大地震をこれまでも経験しており、その都度、法改正を繰り返しながら建築物の耐震性能を強化してきました。

たとえば、建築法規の代表格である建築基準法(1950年に制定)を見てみると、十勝沖地震(1968年)で多くの鉄筋コンクリート造りの建築物の柱が破壊されたのを契機に、1971年にコンクリート柱の帯筋補強規定が強化されました。また、その7年後には宮城県沖地震(1978年)が発生したことを受けて、1981年に耐震設計基準が現在の「新耐震基準」へと大幅改正されました。

さらに、2000年には地震による建築物の変形や損傷の度合いを計算することができるよう「限界耐用計算法」(構造計算方法の1つ)が取り入れられ、2007年には耐震強度偽装事件(2005年)をきっかけに「構造計算適合性判定制度」が導入。第三者機関による構造審査(ピアチェック)が義務付けられ、これまで以上に構造計算が厳格化されました。

「税制」「融資」「助成」による3つの制度で、国と地方公共団体が耐震改修を支援

1995年に施行された耐震改修促進法も、阪神淡路大震災を契機とした法律です。この法律は地震による建築物の倒壊被害から国民の生命、身体および財産を守るため、一定規模以上の建築物の所有者に対し、その建築物が現行の耐震基準と同等以上の耐震性能を確保すべく、耐震診断や耐震改修に努めるよう(努力義務)指導しています。

同時に、国と地方公共団体に対しても建築物の耐震診断と耐震改修の促進を図るべく、資金の融通やあっせん、資料の提供その他の措置を講ずるよう努力義務を課しています。特に、建築物の耐震改修については全国的に取り組むべき「社会全体の国家的な緊急課題」と位置付け、2006年に同法の法改正を通じてさらなる促進に努めています。

同法を基にした国と地方公共団体による耐震改修を支援するための3つの制度内容は、次の通りです。

(1)税制上の優遇制度
住宅の耐震改修を実施した場合、所得税と固定資産税の減免が受けられます。

所得税については、自ら居住の用に供している1981年5月31日以前に建築された住宅に対し、現行の耐震基準に適合させる補強工事を2013年12月31日までに行った場合、改修費用の10%相当額(最大20万円)が控除されます。

また、固定資産税については1982年1月1日以前からある住宅について、2006年1月1日から2015年12月31日までの間に現行の耐震基準に適合させる補強工事(ただし、工事費用30万円以上であることが条件)を行った場合、その住宅に対して一定期間、固定資産税額(建物部分のみ)が2分の1に減額されます。

(2) 融資による支援制度
住宅金融支援機構が住宅の耐震改修について融資を実施しています。マンションの管理組合向けとしては、融資額1戸につき原則として150万円かつ共用部分の工事費の80%を上限に、最長10年間、借入金利1.46%(2012年3月時点)での共用部分リフォーム融資を提供しています。

(3)地方公共団体による助成制度
住宅の耐震診断や耐震改修を行う際、その費用の一部が助成されます。なお、補助制度の有無や助成の内容は地方公共団体によって異なりますので、お心当たりの人はお住まいの市町村に直接お尋ねください。

                       ☆  ☆  ☆

「今後4年以内に首都圏でM7クラスの直下地震が70%の確率で発生する」との研究結果もあります。自分の生命と財産を守れるのは自分だけです。高経年マンションの管理組合の方々は、支援制度を上手に活用しながら耐震改修の実施に踏み切ってもらいたいと願います。



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