誤用の多い慣用句10選……どこが間違っている?
普段何気なく使っている言葉にもまだまだこんな間違いが!
問題
Q1:あやうく、足もとをすくわれるところだったQ2:彼は急に椅子から、やおら立ち上がった
Q3:彼はムッとしたのか、憮然とした表情で立ち去った
Q4:このホラー小説って、あまりぞっとしないね
Q5:明日は新しいタワービルのこけら落としなんだって
Q6:たくさんのご馳走につい舌を鳴らした
Q7:まったく昨日は、上や下への大騒ぎだった
Q8:そんなに声をあらげないでよ
Q9:昨日とは言ってることが真逆だよね
Q10:あのドラマの登場人物ってみんな破天荒で楽しいよね
いくつわかりましたか?
Q1:あやうく、足もとをすくわれるところだった
「足もとをすくわれる」が間違い。正しくは「足をすくわれる」です。「足をすくわれる」とは、ちょっとした隙につけ込まれて相手に失敗させられるという意味です。一方「足もと」という言葉の意味は、文字通りで足の近く、立っているところという意味ですが、それ以外にも、身近なところ、現在置かれている状態、歩く時の足の運び方、歩きぶりなどの意味もあります。「足もとに火が付く」などのように危険なことに関して使う場合も多いので、それと混同してしまっての誤用でしょうか。Q2:彼は急に椅子から、やおら立ち上がった
これは「やおら」の意味の取り違いです。「やおら」とは、急にとか、いきなり不意にという意味ではなく、正しくは、おもむろに、静かにゆっくりであるさまを指します。
Q3:彼はムッとしたのか、憮然とした表情で立ち去った
こちらも「憮然」の意味の取り違いです。「憮然」は、ムッとするとか、腹が立つという意味ではありません。正しくは、落胆する、驚き呆れて、呆然とするさまを指します。Q4:このホラー小説って、あまりぞっとしないね
では「ぞっとしない」とは、どういう意味でしょう? これは、あまり面白くない、感心しないという意味で、怖くない、恐ろしくないという意味ではないのです。怖いホラー小説や映画であっても、それが面白くなかったという意ならわかりますが、「これって、怖いっていう話だからビクビクしながら見たけど、ちっともぞっとしなかった」などの言い方も間違いになるわけですね。
Q5:明日は新しいタワービルのこけら落としなんだって
「ビルの柿落とし」が間違い。ビル内に劇場があってそれを指すならばわからなくはありませんが、本来の意味は「こけら落とし」とは、新しく建てた、または改築した劇場で行われる興行を指します。劇場の開場を祝う最初の催しのことをいう言葉なのです。Q6:たくさんのご馳走につい舌を鳴らした
「舌を鳴らす」が間違い。「舌を鳴らす」とは、軽蔑したり不満の気持ちを表すようなときに、チェッと舌打ちするようなことを指す言葉です。ご馳走を見て、ピチャピチャ舌が鳴るという場合もあるかもしれませんが、本来の言葉の使い方としては誤りです。「舌鼓を打つ」ならば正しいですね。ほかに「鳴る」の付く言葉としては、次のような使い方があります。「猫がごろごろ喉を鳴らす」「彼は得意そうな感じで鼻を鳴らした」などがあります。Q7:まったく昨日は、上や下への大騒ぎだった
「上や下への」が間違い。正しくは「上を下への大騒ぎ」です。「上を下への大騒ぎ」とは、大勢の人が入り乱れてごったがえす様子という意味です。上や下も、上を下も言葉の響きが似ているための誤りでしょうか。Q8:そんなに声をあらげないでよ
「あらげる」が間違い。正しくは「声を荒らげる(あららげる)」です。Q7に同じく響きが似ているための誤用かもしれませんね。
Q9:昨日とは言ってることが真逆だよね
「まぎゃく」が問題です。以前、流行語大賞にノミネートされたこともある言葉です。現在は何の疑いもなく使う人が多いと思いますが、本来は「真逆」は「まぎゃく」ではなく、「真逆」と書いて「まさか」と読みます。「まさか、あそこで失敗するとは思わなかった」などの「まさか」です。今は「あの兄弟って真逆だよね」のように正反対の意味で使われていますが、本来は違うものです。真っ白などのように、「逆」を強調した(=まるっきり逆)と同じような意味で使われているのでしょうね。
Q10:あのドラマの登場人物ってみんな破天荒で楽しいよね
「破天荒」の意味の取り違いです。「破天荒」とは、天荒を切り開くという中国の故事からきた言葉で、未曾有、前代未聞というような意味を持つ言葉です。人で言うなら、今まで誰も出来なかった前代未聞の偉業を成し遂げたような人物を表す場合に使う言葉です。豪快で大胆、常識はずれ、ハチャメチャなどの意味で、「学生のころは遊んでばっかで破天荒だったよな」などと使うのは大間違い!いかがでしょうか? 普段、会話や文章の中で何の迷いもなく使っていた言葉はありませんでしたか? 言葉の響きが似ているものや、意味がそれこそ真逆、正反対などというものもありますから、適切な大人の表現力を身につけるためにも、こんなうっかり言葉遣いを時折見直して、誤用に注意したいですね。
【関連記事】