液状化対策の強化や制振・免震構造の採用も増えている
湾岸エリアなどでは、液状化対策を強化する動きも見られます。埋め立て地など液状化のリスクがある軟弱地盤では、地中深くの支持層と呼ばれる固い地盤まで杭を打ち、建物の倒壊を防ぐケースが一般的です。加えて液状化対策として、表面の柔らかい地盤を固めたり、砂状の杭を多数打ち込むといった工法が採られています。こうした液状化対策は以前から実施されていたものですが、震災以降は敷地内の施工範囲を広げるといった取り組みが増えているようです。さらに敷地内は液状化しなくても、敷地の外が液状化して境界線上に段差ができ、給排水管などライフラインが断絶する被害も想定されています。そのため、境界線をまたぐ配管に柔軟な素材を採用し、段差が生じても壊れにくくするといった対策を導入するマンションも出てきました。
また、タワーマンションなどでは建物の構造そのものを制振構造や免震構造とするケースも増えています。制振や免震は装置によって地震のエネルギーを制御したり、吸収することで、建物の揺れを低減することが可能です。そのため建物の構造部分の損傷を軽くしたり、室内で家具などが転倒する被害を抑えるのに有効とされています。
家具を金具で固定できるよう壁に下地を設置
通常の耐震構造のマンションでは、大きな地震の際に建物も大きく揺れるため、固定していない家具などが転倒してケガをするリスクがあります。そこで食器棚や冷蔵庫といった大型の家具や家電を金具などで固定できるよう、壁に下地を入れる物件が増えてきました。一般的に家具の固定については突っ張り棒などを利用するケースが多いと思われますが、天井部分が梁などの構造躯体でない場合、地震のときに天井が壊れて家具が倒れる危険もあります。そこで壁に鉄板などの下地を入れ、金具でしっかりと固定できるようにすることが重要です。とはいえ、隣戸との間の戸境壁は共用部分なので、通常は釘などを打って穴を開けることは禁じられています。そこで売主側があらかじめ管理規約を変更し、下地部分に穴を開けられるようにする必要があります。また鉄板などにドリルで穴を開けるのは素人ではなかなか難しいので、入居後に専門業者を派遣するサービスを導入するケースも今後は増えそうです。
居住者同士のコミュニティ形成をサポート
震災をきっかけに見直されたのが、人々が助け合って困難を乗り切ることの大切さです。マンションの場合は一つの建物に住む居住者同士が助け合うことで、けが人や高齢者のサポート、炊き出しによる暖かい食べ物の提供といった活動が可能になるでしょう。こうした活動をスムーズに行うためには、日ごろから居住者同士が交流し、顔見知りになっておくことが重要です。そこで売主や管理会社がサポートしながら、イベントや管理組合活動などを通じてコミュニティを形成しやすくする取り組みも活発になっています。また、より直接的な災害対策として、管理組合による避難訓練や災害用備品の使い方の指導といったことに力を入れるマンションも増えています。デベロッパーが分譲時に防災マニュアルを用意したり、入居前に防災セミナーを開くといったケースも見られます。
こうしたハード面、ソフト面での防災対策への取り組みが広がることで、災害に強いマンションが増えていくことに期待したいところです。