業界初! 開墾からスタートした女性エノローグ・ワイナリー
新しいワイナリー。看板には猫のエチケットが
「ドメーヌ」とは、ぶどうの栽培からワインの醸造、瓶詰までを一貫して手がけるワイナリーをさすフランス語。「ミエ・イケノ」はワイナリーのオーナー池野美映さんのお名前だ。
池野さんは、フランス、モンペリエ大学にてフランス国家資格ワイン醸造士(D.N.O.)を取得後、ぶどう栽培、醸造学、微生物学、経営学などを修め、ブルゴーニュや南フランスなどフランス各地の醸造所でワイン造りの経験をつんだエノローグ(ワイン醸造技術管理士)である。日本で、土地探しと開墾からスタートし、栽培、醸造、経営をほぼ一人で仕切る女性は、たぶん、彼女が業界初だろう。今回でお目にかかるのは2回目だが、一人でワイナリーを切り盛りするなんてどんなスーパーレディかと思うが、実際の池野さんは小柄で繊細。クレヴァーでとってもチャーミングな女性なのだ。
南アルプス、富士山に見守られる標高750m「猫の足跡畑」
真っ青な空と真っ白の雪をかぶった畑のコントラストが感動的
「この場所を見つけたときに残っていた猫の足跡から名づけたんです」と池野さん。ワイナリーにもボトルにも猫の足跡が刻まれている。自然のままの畑には、猫のほか猪や鳥たちも遊びに来る。
池野さんの案内で、2度目の訪問となる畑に立つ。たずねた冬は、剪定など畑の管理、瓶詰作業で忙しい時期だ。
ワイナリー最上階はブドウ畑と同じ位置。屋根からの「雫」も美しい
「戦前は桑畑で、最近まで耕作放棄地だったんです。この場所に立った瞬間、ここに畑を作ると決めました」と池野さん。
2007年4月の開園以来ぶどう樹は年々増え、さまざまに試験醸造を重ねてきた。2011年9月、ワイナリーが完成し本格的に商品造りが可能になり、2011年12月1日初リリースとなった。
「雫」がテーマ、グラヴィティー・フロー・システム
畑と搾汁機の下には発酵槽、さらにその下には熟成の樽庫が
味わいについては後述するが、ミエ・イケノのワインはとてもナチュラル。その理由のひとつにこのワイナリーの「グラヴィティー・フロー・システム」がある。
この「システム」は、収穫から瓶詰めまでの過程をポンプなどによる人工的な負荷を、できるだけぶどうや果汁やワインにかけず、重力のまま自然に落下するように行う醸造法や設備のこと。「ドメーヌ ミエ・イケノ」では、ワイナリーをわざと斜面に配置し高低差をつけ、自然落下する工夫を随所に施しているのだ。
タンクの大きさと池野さんを比べてみて。彼女のサイズ!
タンクは2KLサイズが6台、1KLサイズが6台のほか、プレミアムワイン用の1.5KL~2KLサイズと小ぶり。「ワイン造りは何しろ洗浄が多い。私の体に合わせたサイズなんです」と彼女。
さらに、「このワイナリーは雫がテーマ」とも。
雨のしずくが、コルドン・ロワイヤル仕立てのぶどう樹に注ぎ、火山ローム層土に染み渡る。土壌の深いところからぶどう根がミネラルを取り込み、土地の味わいがそのままぶどうになりワインになっていく。
ちなみに、小淵沢リゾナーレでは、ミエ・イケノワインを飲むためのオリジナルワイングラスが用意されているのだが、このグラスの形も「しずく」をイメージした池野さんのオリジナル作品だ。
自然がキーワードのワイナリー。畑もありのままの自然に逆らわない農法「リュット・レゾネ」(有機肥料を使用する減農薬農法)を取り入れ、雑草は取り除かない草生栽培を行う。
最下階。新樽のいい香り。
ワインが飲めるのは、今のところリゾナーレ八ヶ岳(小淵沢)のレストラン「OTTO SETTE(オット セッテ)」でのみ。この貴重な「ドメーヌ ミエ・イケノ」のシャルドネとピノをはじめとした日本産ワインとともに楽しむワインフルコース「Vino e Cucina(ヴィノ・クチーナ)」にてだ。
では、その美しいワインと料理をご紹介しよう。