土地活用のノウハウ/空室対策・賃貸管理・老朽化

不動産会社との失敗しないつきあい方(2ページ目)

自主管理からサブリースまで賃貸経営のスタイルはさまざまで、それぞれにメリット、デメリットがあり、つきあい方や、注意点も変わります。オーナーさんと不動産会社との関係には、2つのスタイルがあります。第1は、不動産仲介会社に入居者の募集と契約だけを依頼する場合、第2は、不動産会社が入居者の募集だけでなく、賃貸物件の管理まで請け負っている場合です。それぞれの場合について、問題点を考えてみましょう。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

複数の不動産仲介会社に募集を頼む場合の問題点 

自主管理で入居者の募集だけを不動産会社に頼んでいる場合、築年数の経過とともに担当者の動きが鈍くなる傾向があります。複数の不動産会社を競わせるやり方は、一見すると空室対策に有効ですが、実際にはさまざまな問題があります。

管理業務をオーナーさんが自ら行い、入居者の募集は複数の不動産屋さんに頼むというスタイルは、以前は普通のことでした。これを「一般媒介」といいます。

賃貸物件が不足し、オーナーさんが空室に悩むことがなかった時代には、複数の不動産仲介会社に「早い者勝ち」で入居者を募集させても、それほど問題は起きなかったのです。しかし、現在のように物件が入居希望者によって選ばれる時代になってくると、複数の不動産仲介会社で募集するより普段から付き合いのある会社に依頼したほうが、早く空室が埋まるケースが多くなっています。

複数の不動産仲介会社に募集を頼むと、それぞれの会社から見れば広告等にお金をかけても自社で入居させられなかった場合、そのコストは丸損になってしまいます。そうなると各社は「募集にあまりコストはかけられない」という意識になります。ですから募集広告などもなかなか打ってくれません。複数の不動産仲介会社に募集を頼む場合、オーナーさんが自分で入居契約書を用意していなければ部屋ごとに契約内容が違ってしまったり、入居申込書も不動産仲介会社に写しをもらって取っておくようにしないと、オーナーさんの手元に残らなくなってしまうといった問題もあります。

入居者募集だけを頼んでいる不動産仲介会社は、オーナーさんの賃貸経営に責任を負っているわけではないので、家賃滞納トラブルの際のアドバイスや手助けというのは、基本的に行いません。オーナーさんの中には、「入居者を連れてきた不動産屋が何もやってくれない」と文句を言う人がいます。「入居者を斡旋したくせに」というのですが、それを理由に不動産屋さんを責めるのは、お門違いというものです。

不動産仲介会社にしてみれば、「私たちは入居者を入れるのが仕事で、その後の月々の集金についてまでは関与していません。入居者とオーナーさんとが直接契約を結んでいるので、私たちでは責任は持てません」ということなのです。

「あんたが斡旋してきた○○号室の××さんが家賃を滞納してるんだ」と文句を言っても、「そうですか」と、電話の一本を入れるぐらいがせいぜいです。

そして電話しても出なかったら、「なかなかつながらないんですよ」でおしまいです。

仲介だけを頼んでいる場合でも、建物が新築のうちは希望者を連れていけば入居がすぐに決まるので、不動産屋さんもオーナーさんをちやほやしてくれます。けれども築10年を過ぎると様子が変わってきます。建物が古くなってくると入居も決まりにくくなるので、新築の頃には「早い者勝ち」で競って入居希望者を連れてきてくれた不動産屋さんも、なかなか目を向けてくれなくなるのです。

オーナーさんがきちんと修繕計画を立てて建物の美観を維持していればまた話も変わってくるのですが、一般的には建物の老朽化とともにオーナーさんと不動産屋さんとの間には温度差が出てきます。私の元へ相談に来られるオーナーさんの多くは、そうしたことをきっかけに不動産会社との間の信頼関係が崩れていて、お互いに不信感を持っていたり、時には敵対しているようなケースすらあります。
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