アガリ 85歳~終末
75歳~85歳までの選択に加えて、「都心の介護施設へ入所」「トカイナカの介護施設へ入所」「地方の介護施設へ入所」など更に選択肢は多様に
長寿化のおかげで、2035年の平均寿命は男性82.31歳、女性89.06歳にまで伸びます。現在30代の女性シングルの中には100歳まで生きる人も珍しくなくなります。ところが80歳代になると、骨折がもとで認知症になるなど、自立した生活ができなくなる人が急激に増加します。しかも、これは生涯未婚の単身者だけの問題ではありません。結婚した人もこの時期になると、夫婦いずれか(多くは夫)が亡くなることで、ほとんどが単身者になってしまいます。最後は結婚しようがしまいが、誰でも一人なのです。まず、高齢者になる前から、そしてどんな住まいであっても、肝に銘じておきたいことは、近隣住民との交流を積極的に図っておくということです。
私は現在、京都の西陣の近くに建つ築100年の町家を借りて月のうち1~2週間暮らしています(私は現在3か所の拠点があるのです)。この地域は町内会を中心とした地域コミュニティが長年にわたり形成されており、季節の行事や冠婚葬祭が地域住民を中心に執り行われています。このように近所づきあいが緊密な地域であるにもかかわらず、先日投函されていた町内会報には「町内会にも入らずに、ほっておいてほしい、というお年寄りが増えました。近所との接触がないままに、介護保険の支援や介護を受けられずに孤立していく高齢者が今後ますます増えそうで心配です」ということが書かれていました。こうした地域ですら、高齢者の孤立が問題になるわけですから、東京の都心部では、より深刻な無縁社会となってしまうのです。
セキュリティのレベルの高さを誇る都心のマンションには、外部の人間が中に住む高齢者の安否を容易に確認することができません。加えて、若いころから近所づきあいをしないまま、年をとった大都市の単身高齢者は他人との関わりが全くないため、自らSOSを発信し、誰かに助けを求めようとはしないのです。それでなくても、人との関わりを拒絶するようになること自体が、老化そのものなのですから。誰しも(このコラムを閲覧している30代のあなたも例外ではありません)高齢化すれば、人との関わりから疎遠になる、だから比較的若いうちから意識的に地域との関わりをつくっておくことが求められるといいうわけです。
次のページでは、助けが必要となったときの単身者の選択肢を見ていきましょう。