学習・勉強法/早期教育・幼児教育

プレ幼稚園時期の望ましい家庭教育とは

幼児期の早期教育は学童期の教育と異なるアプローチが必要です。成長してからの抽象思考の世界への橋渡しができる具象世界の経験を積むことが望まれます。

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

幼稚園は3年保育が主流で入園時点は3~4歳です。幼児教育の先生方とお話をしていると、幼稚園に入園してきた時点でこどもの発達にはかなりバラつきがあるとおっしゃります。それが極普通のバラつきの範囲ならよいのですが、どうも家庭での養育歴の違いによってバラつきの度合いが拡大しているのではないかと言うのです。

一方で早期教育は以前の一部教育熱心な家庭で行うものから、広く一般的に取り入れられるようになってきています。それなのに前述のような差が起きるのはどうしてなのでしょうか。

プレ幼稚園の時期にどのような家庭教育をしたらよいのか考えてみましょう。

早期教育のイメージ

かたつむり

フラッシュカードで言葉をインプットするだけでいいの?

早期教育と聞けば、早くから足し算ができたり、漢字が読めたりする。あるいはフラッシュカードでたくさんの言葉や事柄を記憶する子どものイメージが浮かびます。それは七田式や公文式が広く認知されて広まったイメージだと思います。

これらは大人がその結果を確認しやすく、成果を認めやすい内容であることを忘れてはいけません。発達心理学では子どもが成長する家庭で事柄を学習するのに適した時期があるというレディネスの概念があります。

古典的なレディネスではバラつきはあるものの月齢でおよその学習能力は定まっていると考えられていました。現在ではレディネスも個人差があり、その子どもが学習段階に達している状態をレディネスがあると呼ぶようです。

幼児の精神は未発達なので、大人と同じように考えたり理解したりはしません。ですから早期教育は学校で学習する内容を先取りして教えても、先のレディネスが整っていないため効率の悪いものになってしまいます。場合によっては効率の低下どころか発達に悪影響を与える可能性すらあります。

反対に今まさに殻を破ろうとしている時に適切な刺激を与えたなら、何十回言っても理解できなかったことを一瞬で悟ってしまうことが起こります。

望ましい早期教育とは

ところでJT季刊誌『生命』の2011年秋号で京都産業大学の永田和宏教授が次のことを言っています。

「学生に接するようになって感じるのですが、今の若い人は、現実の世界から何かを引き出すという訓練を全く受けていませんね。小学校から高校までの教育は、全て、既に分かっている情報を与える。つまり、デジタルからデジテルへ情報を変換することしか教えていないのです。数学や算数はもちろん、国語もそう。文章を見せて意味を問うのは、言葉で表現されたデジタル情報をもう一回デジタルに変換しているだけでしょう。」

永田教授のこの言葉に望ましい早期教育のヒントが隠されていると思います。ペーパーやテレビ、パソコンなどの映像などバーチャルな情報を幼児に与えるだけではダメだということ。

子どもというのは周囲に働きかけて、その反応を見て世界というものを自分の中に作り上げていくものです。できるだけ豊かな現実にたくさん触れ合うことが子どもの内的な世界を広げることにつながります。

ですからペーパー教材や完成された玩具より前に、生き物や土、水、空気など様々なものに触れることが重要と考えられます。
 

実物教育

具体的には何をしたらいいでしょうか。まずは実物教育です。部屋の中の物、家の外のものを一つ一つ手にとって「これは~ですよ」と子どもの手に触れさせながら教えます。実物に触れる方がフラッシュカード100回見せるより強い印象を残します。七田式を考案した七田眞氏は「赤ちゃんは賢いので嫌がったり注目しなくなったりしたらカードは見せなくて良い」と言っています。すぐに覚えてしまうから。

だとすればカードではなく実物を見たらたちまち記憶してしまうに違い有りません。私の長女が最初に発した言葉が「はっぱ」でした。妻が散歩の折に「これは葉っぱよ」と植木の葉を触らせていたからです。

また「風が涼しくて気持ちいいね」というようなカードでは教えられない感覚も伝えることが可能です。実物教育が「ことば」のインプットを通じて世界を認知する働きかけなのです。言葉を話し出す以前から、語彙を増やしていく時期に適した働きかけです。
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