管理会社によって修繕積立金7000万円が着服される。
報道(毎日新聞11月2日)によると、2010年4月、東京・港区内のマンションで管理組合の理事長に「組合の口座を増やす必要があるので、銀行届け出印を用意してほしい」と嘘をつき、組合名義の新規口座を開設させました。その後、組合の元の口座から修繕積立金を数回に分けて開設した新口座に無断で振り替え、最終的に本人名義の口座に預金を移し変えてだまし取ったというのです。
驚いたことに、詐取した額は合計7000万円。同社の内部調査で今年2月に着服が発覚しており、「競馬などに使った」と本人(2月25日に懲戒解雇)も容疑を認めています。
これにより、太平洋興発は平成23年3月期業績予想の下方修正を余儀なくされました。社内調査によると、こうした蛮行は2009年7月から行われており、発覚する今年2月までの間に総額およそ5億8000万円を着服していたことが判明したからです。同社は元従業員によって着服された預金を全額、該当する管理組合に返金するとしており、その補填の財源捻出のため、特別損失の計上を強いられることとなりました。
事態を重く見た太平洋興発は代表取締役以下5名の役員に対し、役員報酬を10%~50%減額(3カ月)する処分も不祥事が発覚した時点で発表しています。折りしも、損失隠し問題に揺れる大手精密機器メーカー「オリンパス」に、巨額借り入れの発覚によって特別背任容疑で元会長が逮捕される「大王製紙」と、世間ではコーポレートガバナンス(企業統治)が問われています。太平洋興発の各役員に対しても、不正行為を長期間発見できなかった経営管理責任が課されるのは当然の成り行きでしょう。
マンションの理事長らによる「内部犯行」も発覚 社会秩序の崩壊が危惧される
話を元に戻し、実はマンションの管理費や修繕積立金を横領・着服する事件は今に始まったことではありません。たとえば、沖縄県では2008年3月、マンション分譲大手の系列管理会社社員が2000年~08年までの8年間、担当する県内の19の管理組合で合計約8000万円を横領していたことが明らかになりました。また、2009年10月には東京都内のマンション管理会社社員が自分の担当する管理組合から8回にわたって合計で約800万円を引き出して横領、詐欺容疑で逮捕されています。さらに、今度は神奈川県小田原市内でマンション管理組合の理事長が2005年からの3年間で合計約2000万円を組合口座から引き出し、着服していたことが発覚しています。長崎市では2008年7月、市内にあるマンションの管理人が数年間にわたり約2億円を着服していたことも判明しています。静岡県では県内のマンションで会計担当をしていた理事が修繕積立金を横領したとして起訴され、09年5月の初公判で横領金額が総額1億3690万円だったことが明らかになりました。
このように、かなりの頻度で不正事件は起こっており、しかも、犯罪に手を染めるのは管理会社の従業員に限ったことではないのです。理事長や会計担当役員など、“内部犯行”による愚行も繰り返し発生しています。社会秩序の崩壊と言わんばかりの惨劇が、マンション内で頻繁に勃発しています。
一体、自宅マンションでこうした惨事が起こらないようにするにはどうしたらいいのか、次ページで防止策について考えてみることにします。