世界遺産/アジアの世界遺産

ルアン・パバンの町/ラオス(3ページ目)

ラオスの古都ルアン・パバンは仏の心がいまに伝わる生きている聖地。メコン川が育む熱帯の深い緑の中に60以上の寺院が点在し、僧たちはいまだ托鉢によって食べ物を手に入れる。今回は東南アジア一美しい街のひとつであるラオスの世界遺産「ルアン・パバンの町」を紹介する。

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

ルアン・パバンの歴史

ワット・シェントーン、レッド・チャペルのモザイク壁画

ワット・シェントーンにある祠堂レッド・チャペルのモザイク壁画。人々の生活の様子が鮮やかに描き出されている ©牧哲雄

プーシーから見た王宮博物館

プーシーから見た王宮博物館本館。かつての王宮で、王族が集めた宝物や調度品を見学することができる ©牧哲雄

14世紀まで、ラオスはタイのスコータイ王国(遺構は「古代都市スコータイと周辺の古代都市群」として世界遺産登録)やカンボジアのアンコール帝国(同じく「アンコール」として世界遺産登録)の影響下にあって、様々な都市国家が興っては滅んだ。

1353年、ラオ族のファー・グムがこうした都市国家を統一し、首都シェントーンを中心としてラーンサーン王国を建てる。 

その頃アンコール(クメール)では交易先のスリランカやミャンマーから伝わった上座部仏教を取り入れていたのだが、ファー・グムはクメールと盛んに交流し、この新しい仏教を国全体に広めた。シェントーンにはたくさんの寺院が建てられて、僧や仏師をアンコールから迎え入れた。

15世紀、タイのアユタヤ王国(「古都アユタヤ」として世界遺産登録)がアンコールを滅ぼすが、16世紀にはそのアユタヤ王国もミャンマーのタウングー朝に落とされてしまう。ラーンサーン王国はこの脅威を避けるため、1560年に首都をビエンチャンに移し、シェントーンをルアン・パバンに改名する。

シーサワンウォン王の銅像

最後のルアン・パバン国王であり、ラオス王国の初代国王であるシーサワンウォン王の銅像。王宮博物館に設置されたもの ©牧哲雄

18世紀にはラーンサーン王国はビエンチャン王国、ルアン・パバン王国、チャンパーサック王国の三国に分裂し、ルアン・パバンはルアン・パバン王国の首都となる。しかし1779年にタイのトンブリー朝によって三国共に属領化され、さらに1893年にはフランスに支配されて植民地となる。

その後1953年にラオス王国として独立するが、すぐに内戦に陥ってしまう。その内戦は1975年、ラオス人民民主共和国の成立をもって終了し、王制も廃止された。

このように、ルアン・パバンはつねに周辺国や宗主国の支配や脅威にさらされてきた。多様な文化が混じり合うその姿は、こんな歴史によるのだろう。そしてルアン・パバンは14世紀にシェントーンとして首都になって以来、王宮のある首都として、あるいは多数の寺院が立ち並ぶ聖なる都として、国民に愛されてきた。ラオ族の心のより所である点は、いまも変わらない。

 

ルアン・パバンの見所

ワット・マイ本堂

赤い五重屋根が美しいワット・マイ。ルアン・パバン様式でもデザインはお寺によってずいぶん違う ©牧哲雄

見所となるルアン・パバンの歴史的建造物を簡単に紹介しておこう。

■ワット・シェントーン
ホーラー・サロット

ナーガが守護する霊柩船を収めたワット・シェントーンの黄金祠堂ホーラー・サロット ©牧哲雄

1560年にセーターティラート王が建てたラーンサーン王国の菩提寺。ルアン・パバン様式の美しい屋根、壁の豪華な黄金細工、彩り鮮やかなモザイク壁画「マイ・トーン(黄金の木)」など、本堂の外観が実に見事。他にも、カラフルなモザイク画で彩られた祠堂レッド・チャペルや、金色の彫刻で埋め尽くされた祠堂ホーラー・サロットなど、本堂以外の建物も非常に美しく、境内全体が華麗に装飾されている。

■ワット・マイ
正式名称はワット・マイ・スワナ・プー・ラーム。アヌルット王が1796年に建てたお寺。ワット・シェントーンと並ぶ華麗な寺院で、ルアン・パバン様式の五重屋根や、釈迦の説話を描いた黄金の扉、『ラーマーヤナ』の物語を描いた黄金のレリーフなどが見所。ルアン・パバン様式のお寺には、他にワット・セーン、ワット・フォンシャイ、ワット・ホーシャンなどがある。

 

■ワット・ウィスンナラート
ワット・ウィスンナラートのタート・パトゥム

高さ約35mを誇るワット・ウィスンナラートの仏塔、タート・パトゥム ©牧哲雄

1513年、ウィスンナラート王による建立。境内にはタート・パトゥムと呼ばれる巨大な仏塔があり、スイカを半分に切ったような半球があることからワット・マークモー(スイカ寺)という異名を持つ。

■ワット・タートルアン
こちらもウィスンナラート王が1514年に建てたお寺。ビエンチャンにある黄金の仏塔で有名なお寺と同じ名前だが、こちらは少々地味。ワット・ウィスンナラートのものと異なる四角錐の尖った仏塔や、緑と金で覆われた巨大なナーガ像が印象的だ。境内にはシーサワンウォン王の墓もある。

■ワット・パバートタイ
クアンシー滝

クアンシー滝。世界遺産ではないが、約4,000体の仏像が安置されたパークウー洞窟や、美しい石灰棚があるクアンシー滝も有名な観光スポット。いずれもルアン・パバン中心部から約30kmで、ツアー等で訪れることができる ©牧哲雄

別名、ベトナム寺。ベトナム様式のお寺で、釈迦入滅(釈迦は横になって亡くなった)の姿を表した黄金の寝釈迦仏が安置されている。メコン川に面しており、川に沈む夕陽を見ることができる。

■プーシー
「仙人の山」と呼ばれる高さ約150mの丘で、ルアン・パバンの街やメコン川、カーン川を一望する絶景スポット。頂上にはアヌルット王が1804年に建てた仏塔、タート・チョムシーがある。夕陽がとても美しい。

■王宮博物館
ルアン・パバン国王であり、ラオス国王でもあったシーサワンウォン王の宮殿。1909年に建てられたが、1975年に王制が廃止されると宮殿は機能を失い、現在は博物館として公開されている。

 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます