3つの構造概念のなかで「制振」だけがわかりにくいと感じるのは私だけだろうか。地震の揺れに耐える頑丈な骨組の「耐震」や地盤と建物を切り離すことで揺れを伝えにくくする「免震」に比べ、なぜか「制振」だけはその具体的なメカニズムや効果に触れる機会が少ない。

例えばそのわかにくさは表記ひとつについてもいえそうだ。例えばネット上では「制振」と「制震」が入り交じっている。どうも建設業界では「制振」が使われているが、マンションのサイトでは「制震」の字が大勢を占める。これには何か理由があるのか? そこで今回、現在都心で数棟の制振タワーマンションを建設する大成建設に取材を申し込んだ。これを機に疑問を解消しよう。

「制振」と「制震」の違い

オイルダンパー

オイルダンパー

制振は、地震の揺れを吸収しながらエネルギーを受け流す柔構造の超高層オフィスビルが強風にも揺れないように考案された技術である。

「東京スカイツリー」は建物上部に大きな重りを置く制振構造を採用したが、これなどは地震ではなく風の揺れに対処する構造設計である。つまり、「制振」は背の高い鉄骨造の建物に「地震と風揺れ、あるいは風揺れのみの対策」として応用される側面が大きい。だから「震」ではなく「振」の字を用いる。

これに対し、鉄筋コンクリートで作られるマンションは風に負けない重量があり、揺れを考慮する必要がない。だから目的は地震対策に絞られる。したがって風を含む揺れ全般に対する構造設計をあらわす「制振」ではなく、地震に特化した意味合いで「制震」と表記している(タワーマンションはほとんどがこのケース)。ゼネコンのホームページでは両方の字が混在している会社もあるくらいだが、いずれにしてもその構造技術が「地震対策のみかどうか」を基準に使い分けているようである。

制振装置の配置

間柱型鋼板ダンパー

間柱型鋼板ダンパー

制振装置(当サイトでは包括する意味合いの「制振」の字を用いることにする)には、上の画像のようなサスペンションのような形状の「ブレース型オイルダンパー」や右の画像のような「間柱型鋼板ダンパー」がある。

分譲マンションには、オイル漏れチェックなどの定期点検の必要がなく、長寿命の鋼板ダンパーが適していると考えられている。

間柱型鋼板ダンパーは、極めて強い揺れの地震時に、中間部の極軟鋼(画像の格子状の部分)が変形することで、建物の骨格である柱や梁にダメージを与えないことがその役割だ。つまり資産価値の低下につながるような致命的な損傷を免れることが制振装置を組み込むことの主たる目的である。変形による軽減効果は15~20%程度と想定されている。

大成建設では東北太平洋沖地震時に震度5弱または5強を観測した東京都のすべての制振装置を点検したが、変形に至ったものは皆無。さらに東北地方も含め変形による交換を決定したのは現時点で無いという。限界の高さが実証されたといえるだろう。

分譲マンションの制振装置は、上記のような点検(または変形したときの交換)の必要から、その設置箇所は共用部であることが条件となる。そして想定される大地震のそれぞれの揺れに対して効果があるように、もちろんコストバランスも考慮し、配置場所や数が決められていく。
「制震間柱」配置図

「制震間柱」配置図