京都もみじ回遊・名所・旧跡ガイドが選ぶ紅葉めぐり
はっきりとした四季を体感できる日本において、秋が深まると共に期待が高まるのが木々の紅葉・黄葉。中でも千二百有余年の歴史を重ねてきた京都には、紅葉・黄葉を楽しめる名所が多数そろっています。毎年多くの人が紅葉・黄葉を楽しみに京都を訪れますが、筆者も京都の紅葉・黄葉に魅せられたリピーターの1人です。
今回は筆者がおすすめする京都市内の紅葉・黄葉の名所を総動員。京都御所を中心にして時計回りに「京都もみじ回遊」と題してご紹介していきます。
嵐山:川下りや古刹の境内で楽しむ紅葉
京都もみじ回遊、まず最初は京都市内の西側に位置する嵐山です。嵐山と聞いて、誰もが思い出すのは渡月橋(とげつきょう,Googleマップ)。渡月橋から下流は桂川と呼ばれますが、上流は保津川(ほづがわ)となり、観覧ボートが行き交う風景が見られる絶好の観光スポットです。 保津川の上流にある山々は秋になると美しい紅葉・黄葉で彩られます。400年以上の歴史を誇る保津川下りでは、亀岡から嵐山までこの絶景を見ながら舟下りを楽しめます。 さらにJR嵯峨嵐山駅に隣接するトロッコ嵯峨駅とトロッコ亀岡駅を往復する嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車からもこの絶景が楽しめます。
- 嵯峨野観光鉄道のトロッコ列車と保津川下りから眺める紅葉については、こちらの記事にまとめています。
個人で紅葉を記念撮影するのは可能ですが、三脚や一脚を持ち込む写真撮影目的での拝観は不可としており、落ち着いて紅葉を眺められる点がうれしいです。 天龍寺の塔頭(たっちゅう)である宝厳院(ほうごんいん,Googleマップ)では、紅葉の時期を中心に庭園「獅子吼(ししく)の庭」を特別公開しています。日中の紅葉はもちろんのこと、夜のライトアップでは紅葉の美しさがさらに引き立ちます。
また嵐山には社寺以外にも美しい紅葉のスポットがそろいます。
大河内山荘庭園(Googleマップ)は、昭和時代の名俳優 大河内伝次郎が小倉山から見える京都の風景を気に入って30年間かけて造った庭園で、庭園をカラフルな紅葉・黄葉が彩り、一番標高の高い所からは保津川の紅葉も眺めることができます。
保津川近くにひっそりとたたずむ祐斎亭(見学は事前予約が必要、Googleマップ)は明治時代の建物を活かした染色の工房。
部屋の中から四季折々の風景を楽しめるスポットとして注目が集まり、特に秋は部屋の丸い窓や大きな窓越しに見える紅葉を机に反射する机紅葉の絶景を楽しめます。
高雄:一足早めに素敵な紅葉を眺められます
嵐山だけでも十分紅葉・黄葉を楽しめるのですが、嵐山の北西にはこちらも紅葉の名所である高雄があります。 世界遺産「古都京都の文化財」に登録されている高雄の神護寺(Googleマップ)、栂尾の高山寺(こうさんじ、Googleマップ)と槙尾の西明寺(Googleマップ)があり、標高が高いことから京都市内中心部よりも一足早く紅葉・黄葉が色づきます。 散策しながらそれぞれの寺をお詣りでき、散策の途中にも美しい紅葉・黄葉の風景が楽しめますよ。- 高雄を含めた三尾(高雄、槙尾、栂尾)の紅葉については、こちらの記事にまとめています。
衣笠:人気の高い名刹と紅葉をめぐる
京都もみじ回遊、続いては京都市内の北西方向、衣笠(きぬがさ)と呼ばれるエリアです。宇多野から衣笠まで続く「きぬかけの道」沿いには、御室仁和寺(おむろにんなじ,Googleマップ)、龍安寺(りょうあんじ)、金閣寺と名刹が連なっており、それぞれのお庭で美しい紅葉を愛でることができます。 多くの人が集まるこのエリアですが、世界遺産「古都京都の文化財」の一つである金閣寺(鹿苑寺金閣、Googleマップ)の建物と紅葉の組み合わせは、ぜひ見ておきたいところですね。 また金閣寺から少し南へ下った所にある北野天満宮(Googleマップ)は、学問の神様 菅原道真公を奉る天神さんの総本社。豊臣秀吉が築いた御土居の周辺はもみじ苑として公開され、鮮やかな紅葉に包まれます。ライトアップもあり、日中とは違った雰囲気の紅葉は一見の価値があります。
鷹峯:美しい窓越しの紅葉と紅葉のトンネルへ
衣笠と同じく北西方向にある鷹峯(たかがみね)。京都駅から直行するバスがなく行きにくいエリアですが、ここにも個性あふれる紅葉の風景を楽しめる場所があります。 源光庵(げんこうあん、Googleマップ)は、「悟りの窓」と呼ばれる丸い窓と「迷いの窓」と呼ばれる四角い窓から庭園を眺めることができるところとして知られています。紅葉の時期は庭園の紅葉を窓を通して眺めることができますよ。この2つの窓がある本堂の天井ですが、元々は伏見桃山城の廊下。関ヶ原の合戦の後、伏見桃山城が落城する際に徳川家康の家臣が自刃した時の血痕が残る"血天井"として知られています。 源光庵の斜め向かいにある光悦寺(こうえつじ、Googleマップ)は、道路に面した入口からの通路と、門をくぐって本堂に至るまでの通路が紅葉のトンネルで覆われます。
通路を通り抜けた先にあるお庭からは、鷹峯三山を望むことができますよ。
大原:参道から境内まで紅葉尽くし、抹茶を頂きながら紅葉も
京都もみじ回遊、続いて紹介するのは、京都市内の北東方向。デューク・エイセスの『女ひとり』にも歌われて一躍有名になった大原です。ここには三千院門跡(Googleマップ)、寂光院(じゃっこういん)という知名度の高い古刹があり、バス停からの参道も含めて美しい紅葉が楽しめます。 三千院門跡の広いお庭でたっぷりと美しい紅葉を堪能したら、その奥にある宝泉院と実光院にも参詣してみてください。
宝泉院(Googleマップ)は、大きく開いた縁側の向こうに広がるお庭の紅葉をお抹茶と京菓子をいただきながら眺めることができますし、実光院では庭になる柿や紅葉と共に不断桜と呼ばれる小さな桜の花を見ることが可能です。
- 実光院の不断桜については、こちらの記事にまとめています。
鞍馬~貴船:里よりちょっと早い紅葉、電車でくぐり抜ける紅葉も楽しい
大原の西側の山を越えた所にあるのは鞍馬(くらま)。奈良時代の創建で、参拝客向けに境内の坂道をショートカットするケーブルカーも持つ鞍馬寺(Googleマップ)は、京都市内の中心部より一足早く紅葉が色づきます。石段と坂道が続く境内のあちらこちらでさまざまな紅葉を楽しむことができますよ。 鞍馬からハイキングコースで山越えすることもできる西隣の貴船(きぶね)は夏の川床でおなじみですが、秋は紅葉に彩られます。川の水のせいか、鞍馬よりも早い時期に色づくことが多いようです。
水占みくじでも知られる貴船神社(Googleマップ)を中心にして、夕暮れ以降は「貴船もみじ灯籠」という夜のイベントも楽しめます。幻想的な風景は訪れた人の心に強く刻まれることでしょう。 また出町柳から鞍馬、貴船へのアクセスを担う叡山電車にも、素敵な紅葉スポットがあります。それは叡山電車の市原-二ノ瀬間。
この区間は紅葉の中を縫うように電車が走っており、夜はライトアップされた紅葉の中を車内照明を消した電車から眺めるここだけのイベントも楽しめます。
真っ暗な電車から眺める紅葉は幻想的な雰囲気に包まれていますよ。
八瀬:川辺を彩る紅葉・黄葉と紅葉が飾る庭を楽しむ
大原へ向かう際の中継ポイントでもある八瀬。叡山電車の八瀬比叡山口駅(旧 八瀬遊園駅)があり、叡山ケーブルに乗り換えて比叡山延暦寺へ行くこともできます。八瀬比叡山口駅周辺を流れる高野川のまわりには、錦秋という言葉がふさわしい鮮やかな紅葉・黄葉が広がります。 八瀬近くの高野川沿いにある瑠璃光院(るりこういん、拝観は事前予約が必要,Googleマップ)は春と秋に季節限定で公開される寺院です。瑠璃の庭と呼ばれる美しい庭を飾る紅葉・黄葉を2階の窓越しに望む風景が反響を呼び、多くの人が訪れる場所になりました。 紅葉・黄葉は瑠璃の庭だけでなく、瑠璃光院周辺を彩る外の紅葉・黄葉も目を見張るものがあります。 八瀬比叡山口駅の手前、三宅八幡駅の近くにある蓮華寺(れんげじ,Googleマップ)でも、見応えのある紅葉・黄葉が楽しめます。
門をくぐると目の前には境内を包み込む紅葉が広がっていて、その美しさにまず驚きます。 そして本堂の中から眺める紅葉が彩る庭は、まさに絵のような風景。小さなお寺ということもあり、ゆっくりと紅葉・黄葉を愛でながらお詣りすることができますよ。
白川:どこを歩いても紅葉を楽しめます
京都もみじ回遊、続いては市内東側の白川です。 修学院離宮から南に下ると、赤山禅院(Googleマップ)、曼殊院門跡(まんしゅいんもんぜき)、圓光寺(えんこうじ,Googleマップ)、詩仙堂と数多くの紅葉スポットが続きます。このあたりは比叡山につながる山の中腹にあたり、京都でも坂のきついルート。いくつかの社寺をまわるだけでかなりのアップダウンがありますので、歩きやすい靴を履くのは必須ですね。 白川通に出てさらに南へ下ると慈照寺(じしょうじ/銀閣寺,Googleマップ)があり、ここから哲学の道が南禅寺に向かって続きます。 哲学の道でも紅葉を楽しめますが、すぐ近くに法然院(ほうねんいん)、白川通をはさんで西側に真如堂(しんにょどう,Googleマップ)、金戒光明寺(こんかいこうみょうじ)といった古刹が点在しており、それぞれで紅葉を楽しむことができます。 哲学の道を下り、若王子神社を経て、鹿ヶ谷通を下っていくと永観堂(禅林寺, Googleマップ)があります。 「もみじの永観堂」を名乗るだけのことはあり、いつも多くの参詣客で賑わいます。日中と夜のライトアップ、どちらも心に焼き付くような紅葉が楽しめますね。 鹿ヶ谷通をそのまま下っていくと南禅寺(Googleマップ)に到着。大きな三門と琵琶湖疏水が流れる水路閣が人気です。
境内の紅葉を楽しんだ後は、南禅寺の塔頭である天授庵にも立ち寄ってみましょう。南禅寺の喧噪から離れ、静かに紅葉を楽しむことができますよ。
東山:右も左も紅葉と名刹ばかり
京都もみじ回遊、続いては市内東側の東山。衣笠、白川と並んでこのエリアも名を知られた古刹と紅葉の名所ばかりです。三条通から神宮道を下ると、美しい紅葉のライトアップと共に「梵」の字が浮かび上がるお庭で知られる青蓮院門跡(しょうれんいんもんぜき,Googleマップ)があります。 そして知恩院の前から円山公園を抜けた先にある"ねねの寺"高台寺(Googleマップ)と、その向かいにある園徳院のお庭でも美しい紅葉が楽しめます。 そのまま南に下って二寧坂(二年坂)、産寧坂(三年坂)という京都観光の王道コースを進むと、清水の舞台でおなじみの清水寺(Googleマップ)に行くことができます。
舞台の下の色づいた紅葉と、寺を囲む周囲の紅葉は京都の中でも知名度ナンバー1。 夜間のライトアップも含めて通勤ラッシュ並みの人出に巻き込まれることも多いのですが、秋にしか見られないこの風景はぜひ見ておきたいところです。 また東山の尾根筋にある将軍塚(Googleマップ)は、山に囲まれた京都盆地のほとんどを見下ろせる京都では稀有な展望スポット。展望台に続く庭園で多くの紅葉が色づきます。夜は紅葉がライトアップされ、京都の夜景を見下ろしてから紅葉を楽しむというぜいたくな時間を過ごせます。
山科:世界遺産と恋にゆかりのある寺で紅葉を楽しむ
京都もみじ回遊、続いては東山を越えた先の山科(やましな)。山科駅から南に下る地下鉄東西線の沿線に紅葉スポットが点在しています。醍醐寺(だいごじ、Googleマップ)は、世界遺産「古都京都の文化財」の1つであり、多くの人が参詣に訪れます。
境内のあちらこちらで様々な紅葉の風景を楽しめますが、特に絵になるのは境内の奥にある弁天堂周辺の風景。赤い橋と弁天堂、そして木々の紅葉がそろう風景は必見です。 勧修寺(かじゅうじ、Googleマップ)は、玉の輿伝説が伝えられる真言宗の古刹。
境内には水戸光圀公が寄贈したと言われる石灯籠のある庭があります。醍醐寺ほどの人出はありませんので、庭の木々が美しく色づく中をゆっくり散策することができますよ。
随心院(Googleマップ)は、小野小町の邸宅跡と言われる真言宗の古刹。
小野小町ゆかりの寺として、小町が化粧に使ったという井戸も残ります。小さなお寺ですが、本堂から庭園の紅葉をゆっくり楽しむことができますね。小野小町には、深草少将が恋い焦がれて百夜通いをしたという伝説が残されていることもあり、勧修寺と随心院は恋にゆかりのある寺としても注目を集めています。 山科の紅葉スポットとして山科駅の南側に注目しましたが、山科駅の北側には毘沙門堂門跡(Googleマップ)という天台宗の古刹があります。
小さな寺院ですが、境内の紅葉が美しく色づき、紅葉が散る頃には山門前の石段を紅葉が埋め尽くす名所として知られていますよ。
京都駅周辺:紅葉の上に浮く橋、紅葉と五重塔の組み合わせに感動!
遠方から紅葉を楽しみに来た人たちの玄関口となる京都駅。常に多くの人で賑わっていますが、ここからほど近いところで素敵な紅葉・黄葉を見ることができるのをご存じでしょうか。京都駅に近い紅葉の名所として、良く知られているのが東福寺(Googleマップ)。JR奈良線で一駅乗った先の東福寺駅が最寄りです。 東福寺の紅葉・黄葉は、建物を覆うかのように広がっているのが印象に残ります。特に通天橋と呼ばれる建物を望む廊下のような通路(臥雲橋)は、常時人で混み合っているのですが、ここからの風景は何度見ても感動しますね。 そして京都駅から南へ下った所にある東寺(教王護国寺)(Googleマップ)は、新幹線からも見える五重塔がシンボルの真言宗の古刹です。
広い境内のいろいろな所で木々が色づき、金堂や五重塔を入れて様々な角度から紅葉との風景を見ることができます。ライトアップも行われており、日中とは違った雰囲気の紅葉が楽しめますよ。
今年の紅葉狩りは、今回ご紹介した中から選んだ京都の紅葉の名所をぐるりとまわってみてください。
「京都もみじ回遊」でご紹介した場所の一覧
【関連記事】
- 京都の美しい紅葉スポット! トロッコ列車と川下りで2倍楽しむ「保津川」の紅葉
- 京都でいち早く紅葉が楽しめる名所「三尾(高雄、栂尾、槙尾)」を歩こう! 心ときめく人気紅葉スポット
- 秋から春に咲く大原・実光院の不断桜/京都
◇「紅葉の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで紅葉が楽しめる名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
◇「関西の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで関西の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。