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TGS Greeブース ゲームを遊びにきてない人々(3ページ目)

2011年9月15日から開催された東京ゲームショウ。今回初参加でその動向が注目されたGreeブースには、一般日に長蛇の列ができたようです。しかし一方で、ゲーム業界関係者だけが集まるビジネスデイでは、集客に苦戦する様子も。しかしこの状況こそが、ソーシャルゲームというビジネスを如実に表現していると言えるんです。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

みんな、ゲームを遊びにに来たわけではなかった

グラフの図

人が集まれば集まるほどそれ自体が高い価値をうむ、ソーシャルゲームの仕組みを体現したかのような状況でした。

これまでの話を整理すると、実はGreeブースに集まった多くの人が、ゲームを遊びに来たわけではないことが分かります。ゲーム業界人に関しては、ゲームコンテンツの質ではなくソーシャルビジネスの構造に興味を持って情報収集やコネクションの強化が主な目的であることはこれまで説明した通りです。

では、一般公開日に訪れたユーザーはどうか。この人達の多くはゲームをプレイしてはいるものの、ゲームを遊ぶことを目的にしていたわけではなく、カードを貰いに来た人たちです。それぞれのゲームタイトルのレアアイテムは、ゲームを遊んでいない人には価値がありません。つまり、レアアイテムが欲しい人というのは、わざわざ幕張メッセまで行って、自分と関係の無いアカウントで10分程度の試遊をするなんてなんの意味もないんです。Gree側はそれをよくよく理解しているからこそ、それぞれのタイトルにカードを用意して配布することで集客を狙っているんです。

そしてここからがより重要ですが、そのカードを貰った人たちにとってそのレアアイテムがなんで価値が高いのか。それは、他のユーザーに対して、ゲームを有利に進められたり、自慢したりできるからですね。たくさんの人が遊んでいて、その中で差が生まれるというのがソーシャルゲームの価値の根本で、それはゲームコンテンツそのものがエキサイティングであるかどうか、攻略性が高いかどうか、というようなこれまでのコンシューマーの文法をあっさりと蹴飛ばして、一部のユーザーに驚くべき高い価値を感じさせます。

今回、そのことをカード配布による集客でGreeは証明してみせたと言えます。そして、そのソーシャルゲームの仕組に、ゲーム業界の人は興味を持って集まってきてます。Greeのブースはまるで、ソーシャルゲームの内外で起きている現象を顕在化させたかのような状態だったと言えるかもしれません。

カードを貰いに来た人も、色んなゲームを遊んで帰ってもらいたい

PSVitaの図

PlayStationVitaやモンスターハンター3Gなど、話題盛りだくさんの東京ゲームショウ、ぜひ色んなゲームを遊んで帰って欲しいと願います。(イラスト 橋本モチチ)

東京ゲームショウを取材した報道の中には、このGreeの盛況ぶりを伝え、ゲーム業界の中心がそちらに変わっていくのではないかというような論調のものも見られました。そしてそういう記事に反発するコンシューマーゲームユーザーの声も、Web上ではたくさん見かけます。しかし、ガイドは、ここまで価値のあり方が違うものを、ゲームという文脈だけで同じように並べてどちらが覇権を取るのか、みたいな扱いをすることには大変疑問を感じます。

東京ゲームショウにGreeが出展したことはコンシューマーゲーム業界にとっても非常に有益なことだったと思います。そもそも、人気ブースを展開していたレベルファイブが不参加であり、マイクロソフトがかなり出展規模を縮小し、単純な小間の販売、つまりイベント会場の場所を出展者に販売する、という部分だけを見ても東京ゲームショウの運営は窮地に立たされていたはずで、それをGreeが大規模なブースを出展することで補ったという側面があります。

また、カードを目当てにたくさんの人がGreeブースに集まったということは、今までとは違う層の人たちが東京ゲームショウに集まったということでもあります。これは、この人達にコンシューマーゲームを遊んでもらう絶好の機会と言えるでしょう。

1番大事なことは常に、ゲームをたくさんの人に楽しく遊んでもらうことでしかあり得ません。ソーシャルゲームという波が来たことで、どういう形にせよ東京ゲームショウが盛り上がり、もしカードをもらいに来ただけの人がいたとしても、何か色んなゲームがあって楽しげだから遊んで帰ろうと思ってくれたら、それは実に素晴らしい、嬉しいことですよね。

ソーシャルゲームという、コンシューマーゲームとは異質のビジネス、文化と交わることで、さらにゲーム業界全体が発展していくにはどうしたらいいのか、東京ゲームショウがそういう場としてさらに盛り上がっていくことを願いたいと思います。

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