セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

それでも恋はやめられない:伏見憲明『百年の憂鬱』(3ページ目)

夏ももうすぐ終わりですね。HOTなSUMMER LOVEに夢中なアナタも、失恋してマジブルーなアナタも、セミの声を聴きながら無常感にひたっているゴトウのようなアナタも、超弩級のせつない純ゲイ恋愛小説を読んでみてはいかがでしょうか。きっとあのヒットソングのように、夏の胸キュンメモリーになるハズです。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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答えのない問い

みなさんがもし、ユアンの立場に立たされたとしたら、「そんなのずるい!」「別れて」と義明を責めますか? また逆に、義明の立場になったとき、忠士との関係をバッサリ断ち切りますか? 忠士の立ち位置だったらどうでしょう。また、3人の共通の友人であったとしたら、「そんな面倒くさい恋愛、やめたほうがいい」と言えるでしょうか?

ゴトウは実は、どの立場もすべて、経験したことがあります。「ユアン」のときは、胸につかえるものがあっても、言葉を呑み込んで何も言いませんでした(もともと自己評価が低い=卑屈キャラなので、こんな素敵な人とつきあえるだけ幸せ♪と思ってました)。「義明」のときは、本気で「ユアン」のことを愛していましたが、彼の苦しみをどうすることもできず…まさにこの小説のように、熱に浮かされたようにもがいていました(別れてからもずっと引きずり、地獄を見ました。冷静になれるまでにずいぶん時間がかかりました)。「忠士」のときは、「義明」と同居していたのですが、「ユアン」がときどき家に来ていて、正直、快く思いませんでした(自分も同じことをしていたというのに…本当に身勝手だと思います)。共通の友人だったときは、「ユアン」の話を聞きながら「つらいね…」と慰めたり、つい「別れたほうがいいかもね?」と言って失敗したり…

これを読んでいるみなさんのなかにも、同じような経験をした人はたくさんいると思います。本当に苦しい、割り切れない恋。でも、どうしてもあきらめきれなくて、身悶えするような、焼けた火の上を歩くような毎日を送るのです。いっそ別れたほうが楽になるだろうかとか、死んでしまいたいとか…。どの立場に立っても、傷ついたり、苦しんだり、しんどい思いをすると思います。

一寸先は闇…先のことはわかりません。ほとんどの「ユアン」と「義明」はつらさに耐えきれず、ボロボロになった挙げ句、別れてしまうんじゃないか…と想像します。でも、耐えに耐えて、ついに「正妻」の座を手に入れることができた「ユアン」もいます(「忠士」はいなくなってしまいました…)。これまで、どれだけの悲劇が繰り返され、どれだけの血が流れてきたことでしょう。

それでも、「そんな不毛な恋愛やめちゃいなよ」なんてこと、軽々しく言えないや…と、ゴトウは思います。たとえ大事な友達がボロボロになったり、職を失ったり、刃傷沙汰になったり、大変な状況に陥ったとしても(映画『フィリップ、きみを愛してる!』みたいなハチャメチャをやったとしても)、その恋のかけがえのなさ(真実)だけは、誰も否定できないと思うのです。

それはもう、誰が間違ってるとか悪いとかではなく、「答えのない問い」なのです。(だからこそ、これは、小説でしか描けないことなのです)
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