企業のIT活用/IT経営の基礎知識

インターネットの管理者は誰?(2ページ目)

ウェブサイトから情報収集し、電子メール、ソーシャルメディアを使って毎日コミュニケーションをとっています。今ではインターネットなしの生活が考えられないほど大切なインフラ。このインターネットって誰が管理しているのでしょうか。

水谷 哲也

執筆者:水谷 哲也

企業のIT活用ガイド


皆が使うには共通の決まりごとが必要

新しい技術はIETFにドラフトとして提案する

新しい技術はIETFにドラフトとして提案する

A社が作ったコンピューターとB社が作ったコンピューターが通信するには共通の決まりごとが必要。例えばメールを送るにはsendmailという電子メールサーバーソフトが使われ、この仕組が共通の決まりごと(プロトコル)になっています。

sendmailは広く使われていますが送信者が誰か確かめないため、いろいろなプロバイダーのメールサーバを使って多量のスパムメールを送る迷惑行為が行われています。そこでプロバイダーは25番ポートブロックという会員以外のメール送信をシャットアウトすることで対応しています。ただし会員側で設定しないと、今まで送れていたメールがある日、突然送れなくなります。
→ メールはあてにならない!届かないメール 

送信元アドレスを偽装させず迷惑メール対策となる新しい技術「Sender ID」がインターネットの標準化を行う非営利団体IETFに提案されました。しかし特許問題などで標準化には至りませんでした。IETFで標準化が決まると、共通の決まりごとになります。提案によって標準化されるものもあれば、そうならないものもあります。

標準化には皆の賛同を得なければならない

標準化するにはドラフトをRFPにしなければならない

標準化するにはドラフトをRFPにしなければならない

IETFへの参加は自由で会員制度ではありません。運営もボランティアが行っています。参加は企業ではなく個人の資格で参加します。自由にIETFの会合や個別の技術に関して議論を行うワーキンググループやメーリングリストに加入することができますが、議論は英語になります。

IETFでは年3回会合が行われますが、2000名以上の参加者があり、ドレスコードは、ジーンズ、Tシャツにサンダルが標準。お祭り騒ぎしながら技術的には真面目に討議しています。

新しい技術を提案したい人は提案をドラフトと呼ばれる英語の文章にまとめてIETFに送ります。6ケ月間、IETFのサーバに置かれて全世界の人が見ることができます。ドラフトがワーキンググループやメーリングリストなどで討議され、インターネットにとって有効だと判断されるとRFC番号が割り振られます。RFC番号が割り振られるとIETFの公式書類としてサーバで公開されます。インターネットに関わるベンダー、プロバイダー、メーカーは、このIETFのRFCを参照し、共通の決まりごととして製品化します。

ふだんから議論して、皆の賛同を集めておく

ふだんから議論して、皆の賛同を集めておかないとRFPにならない

ふだんから議論して、皆の賛同を集めておかないとRFPにならない

RFCとはリクエスト・フォー・コメントの略で「コメントちょうだい」という意味です。ホームページ登場以前、RFC専用のネットニュース(電子掲示板)があり、ここに投稿すると皆が、RFCの内容を吟味してコメントしました。

コメントを元に改良が加えられ、最後は投票。賛同が多いとRFCとして認められました。この歴史がIETFにも継承されています。

NTTが暗号化技術でITFTに提案を行っており、XMLでのIETF標準署名がRFC(RFC4051)として認められています。日本の企業も積極的にドラフトを提案しています。

ドラフトがRFCに認定されれば、他のメーカーはRFCを元にソフトや製品を作らなければなりません。出した企業は既に開発を終えているので、他社が作っている間に営業をかけ先行者利益を得ることができます。

グローバル社会となり、標準化でしのぎを削っていますが、インターネットの世界ではRFCをとるかどうかで決まります。そのためにはふだんから発言し、皆の賛同をどう集めたらよいか学んでおかないと、いざという時に役立ちません。
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