解雇と退職の違いを理解できていますか?
解雇は企業側からの一方的な労働契約の解消です
今回は労務管理上のトラブルが非常に多い解雇についてその留意点を解説していきます。解雇といっても内容は様々なものがあり、まずは解雇をする際の法的手続きを確実に押さえることがトラブル回避の第一歩です。
解雇で必ず押さえておくべき2つの法令
解雇は企業側から一方的に労働契約を解除すること。従業員に大きな影響を及ぼす恐れがあります。事実、解雇は紛争解決で裁判になったケースが非常に多いのです。判例に基づいて規定された労働法令もあります。■解雇予告と解雇予告手当(労働基準法第20条)
解雇をする場合の手続きを定めている基本規定です。解雇をする際の最低限のルールです。ルールを考慮しないで解雇すると、必ずと言っていいほどトラブルになる可能性大です。従業員を解雇する場合は、そもそも次のプロセスを踏むことが大前提となります。
- 解雇する場合は、少なくとも30日前に予告(解雇予告)をする
- それができない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う
と定められています。
■解雇権の濫用は無効(労働契約法第16条)
解雇予告や予告手当を支払うことは手続きとして押さえるべき内容です。でもそれだけで解雇できるわけではありません。解雇は企業側からする労働契約の一方的解除ですから、企業側に権利があります。この権利は「濫用をしてはいけない」と規定されているのです。これは様々な労働問題の判例の積み重ねによって規定されました。
従業員を解雇する場合は、
- 客観的に合理的な理由を欠く
- 社会通念上相当であると認められない場合
が権利濫用として無効とされるのです。
どういった場合に権利濫用になるのかは、多くの判例が参考になります。
就業規則等に解雇事由の記載が必要
上記の2つの法令を踏まえることの他、就業規則等に解雇をする事項を定めておく必要があります。どういう場合に解雇になるか、できる限り明確に明示しておく必要があります。解雇は、従業員にとってかなりの不利益になることが予想されますから周知は欠かせません。法令で解雇をしてはいけない場合があります
以前、解雇でやってはいけない9つのルール記事で解説しました。そもそも法令で解雇が禁止される場合があります。例えば労働基準法により、業務上の負傷疾病や産前産後の休業中などの場合は解雇が禁止されています。その他、男女雇用機会均等法や育児介護休業法などで禁止される場合があります。この中には罰則付きで禁止されているものもあるので、実務上見落さないようにしておきましょう。次のページでは、解雇予告・解雇予告手当の具体的ポイントを事例解説しています。