労務管理/解雇に関する注意点

従業員を解雇する際のトラブル回避方法(2ページ目)

従業員を解雇するには様々な制約があります。トラブルを避けるために本記事で解雇の法的ルールを押さえましょう。従業員に予告をすることが大原則。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド


解雇予告・解雇予告手当の具体的ポイント

解雇予告を行う際の具体例を確認しましょう

解雇予告を行う際の具体例を確認しましょう

実際に解雇をしなければならない場合、どのように手続きをしたらよいのでしょうか。具体例で確認してみてください。

(例)9月30日に解雇する場合

・30日前の予告はいつ行うのか
少なくとも8月31日に予告をしてください。30日前とあるので9月1日に予告すればよいと思いがちですが間違いです。予告当日は、30日のカウントには入りません。細かいようですが注意してください。

・解雇予告通知書を文書交付しましょう
解雇予告は、法的には口頭でも文書でもどちらでもよいとされています。実務上では、トラブルを避けるために「文書」で交付するようにしましょう。

・解雇予告と解雇予告手当との併用もできます
30日前に予告ができない場合は、予告手当と併用することができます。例えば8月31日に予告ができなくて9月15日に予告した場合。このケースでは、予告日数が15日足りませんね。15日分の予告手当を支払うことで併用することができます。

解雇予告手当の計算方法

解雇予告手当は、30日以上の「平均賃金」とされています。平均賃金って耳慣れない表現ですね。平均賃金の計算方法は、労働基準法第12条に定められています。

算定事由発生日以前3ヶ月間にその労働者に支払われた賃金総額
÷その期間の総日数

とされています。簡単に言うと、解雇予告をする前3ヶ月間の給与1日分の平均です。

・算定事由発生日とは
算定事由発生日とは、解雇予告をした日となります。

・以前3ヶ月とは
実務上給与計算では賃金締切日を決めていることが多いですね。その場合、直前の賃金締切日からさかのぼった3ヶ月のことをいいます。

・賃金総額とは
基本給や手当などの固定給だけでなく賃金は全て含まれます。時間外手当なども当然含まれるので注意してください。ただし、臨時に支払われた賃金・賞与など(3ヶ月を超える期間ごとに支払われるもの)は、賃金総額から除外して計算します。

・その期間の総日数とは
これは暦の日数になります。企業で定めた休日も総日数の中に入ります。所定労働日数ではないので注意してください。

その他、3ヶ月間に業務災害で休業した期間・産前産後期間・使用者の責任で休業した期間・育児介護休業期間・試用期間がある場合は、その日数、賃金額は除外して計算をすることになっています。通常とは異なる状況下ですからこれらは除外するのです。

解雇予告手当の具体例

具体的に解雇予告手当を支給する際のイメージを確認しておきましょう。

(例)9月30日に解雇する場合(賃金締切日 毎月15日の場合)

期間         日数 賃金総額
6月16日~7月15日 30日 300,000円 
7月16日~8月15日 31日 320,000円 
8月16日~9月15日 31日 300,000円

直前の賃金締切日からさかのぼった3ヶ月間で算定します。

3ヶ月の賃金総額 920,000円÷総日数(歴日数)92日=10,000円

となりますね。

解雇予告をしないで即時解雇をする場合には、30日以上の平均賃金となります。したがって10,000円×30日=300,000円の支払いが必要になるわけです。

<参考記事>
トラブルにしない「解雇」の有効・無効の判断基準
有期労働契約の雇い止めの留意点
解雇でやってはいけない9つのルール

<参考資料>
しっかりマスター労働基準法 解雇編(東京労働局)
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