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「旧耐震マンションは危険」—— 築年数がマンション価値を左右する。

東日本大震災はわれわれに多くの経験や教訓をもたらしました。あたかも焼け野原のように街全体が完全にがれきの山となっている惨状を目にし、誰もが地震や津波の怖さを思い知らされたに違いありません。自然災害への脅威が心に植え付けられた瞬間です。住宅に関しては、その「安全」「安心」が根底からゆさぶられることとなりました。

こうした不安心理はマイホーム市場にも大きな影響を与えており、マーケットの冷え込みを懸念する声が多方面から聞こえてきます。特に、中古マンションは耐震性を不安視する消費者のリスク回避行動を受け、震災直後の取引件数は“2ケタ減”の低迷ぶりでした。

東日本不動産流通機構によると、今年3月の成約件数(前年同月比)は東京都がマイナス17.5%、埼玉県がマイナス17.2%、神奈川県マイナス16.6%、そして千葉県はマイナス31.7%と大幅な下落となりました。液状化被害が大きかった浦安市の影響なのでしょう。このように今回の巨大地震はマイホーム選びの基準を根底から覆すほどの「ネガティブ・インパクト」を与えています。

「中古マンションは古くて汚いだけでなく、耐震性も不安」—— といった既成概念ができあがってしまった背景には、1981年(昭和56年)6月に改正された建築基準法の耐震基準が関係しています。日本にあるマンションストック数およそ562万戸(2009年末)のうち、旧耐震のマンションは約110万戸(同)にまで拡大しています。折りしも、ちょうど今年(2011年)は新耐震基準へと移行して30年の節目に当たります。「築30年」が中古マンションの価値を“二分”するベンチマークになろうとしています。

もちろん、旧耐震だから絶対に危険というわけではありません。しかし、少しでも地震リスクを回避したいと考える人にとっては築年数を無視することはできません。「旧耐震マンションは危険」との“防衛本能”が、築30年超の既存マンションを検討対象から遠ざけようとしています。「旧耐震」「新耐震」の別が、中古マンション選びの1つの判断基準になろうとしています。国策として良質なストック社会の実現を標榜した最中にあって、こうした流れは完全なマイナス要素であることは言うまでもありません。

老朽マンション対策など、住宅ストックの再生を推進/住生活基本計画 

そこで、国もようやく重い腰を上げ、耐震化率の向上に尽力し始めました。その1つが5月30日から応募を開始した分譲マンションの長寿命化工事に対する一部助成(後述)です。ちょうど今年3月に「住生活基本計画」が改定され、目標として「住宅ストックの管理・再生対策の推進」や「将来にわたり活用される良質な住宅ストックの形成」が掲げられました。

参考までに住生活基本計画とは、国民の住生活の「質」の向上を図る政策へと本格転換すべく、その安定確保と向上促進のための基本的施策を定めた計画です。当該計画は2006年度から2015年度までの10カ年計画として、2006年9月に閣議決定されました。それ以降、実現に向けた努力がなされてきましたが、時間とともに変化する生活環境や居住者ニーズに即応すべく、今年3月に大きく見直されました。


<住生活基本計画 主な改正ポイント>
  • ハード面(広さなど)とともに、ソフト面の充実により住生活を向上させる。
  • 老朽マンション対策など、住宅ストックの管理・再生対策を推進する。
  • 既存住宅市場において適正取引がなされるよう、市場機能を活用した施策を展開する。
  • 良質な住宅ストックの形成を目指し、リフォーム市場の整備を促進する。

こうした流を受け、一定の条件を満たした分譲マンションの長寿命化工事に対し、国が最大2000万円もの助成をしようというバックアップ制度がスタートすることとなりました。予算不足で工事の実施に二の足を踏んでいた管理組合にとっては朗報といえます。お心当たりのある分譲マンションでは、募集要項を確認の上、応募を検討してみるといいでしょう。

具体的な制度概要は、次ページで詳しくご紹介します。