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今や1450万人が暮らす分譲マンションだが、課題も山積している。

日本に分譲マンションが誕生して、半世紀以上が過ぎました。かつでは高嶺の花とされた分譲マンションも、今では主要な居住形態として定着し、国土交通省によると、そのストック数は全国で約590万戸、およそ1450万人(2012年末現在)が居住するまでに普及しています。

しかし、防犯性や難燃性、充実した共用施設による娯楽性などとは裏腹に、今般、分譲マンションには多くの問題が山積しています。そもそも、分譲マンションには「専有部分」「共用部分」「専用使用権」「敷地利用権」といったいくつもの権利・利用形態が混在しているため、根源的な要因としてトラブルを誘引しやすい性質を有しています。その上、分譲マンションは1つの建物が多くの人々によって区分所有されるため、どうしても全体としての合意形成が難しく、居住者間の“あつれき”(不和)を生じやすくなります。

代表的なトラブルとしては、「上下階の騒音」「ペット飼育」「駐車場問題」がマンション3大トラブルとして挙げられますが、近年では高齢社会の進展に伴う「役員のなり手不足」や「独居高齢者の孤独死」が深刻な事案として持ち上がっています。

居住者同士の摩擦も絶え間なく、訴訟に発展するケースも珍しくありません。昨年12月には、バルコニーで吸うたばこの煙が原因で体調を崩したとして、マンション5階に住む女性が、女性宅の真下の住戸に住む男性を提訴。名古屋地方裁判所から被告男性に損害賠償命令が言い渡されました。

今では、公道での歩きたばこを条例で禁止する自治体もあり、総じて愛煙家への風当たりは良くないのが現実です。健康志向を受け、「受動喫煙」という言葉も広く認知されるようになりました。スモーカーの皆さんにとっては、肩身の狭い時代の到来です。それだけに、自宅マンションで同じような争いを起こさないためにも、以下に紹介する判例を1つの「教材」として、良好なマンション管理運営のために役立ててほしいと思います。

バルコニーから上がってくるたばこの煙がストレスになり、体調を悪化させる 

今回のたばこ訴訟が提起されたのは2011年。名古屋市瑞穂区内のマンションでトラブルは発生しました。訴えを起こした70歳代の女性です。

この女性には、もともと喘息(ぜんそく)の持病があり、下階のバルコニーから上がってくるたばこの煙がストレスとなって、2010年春に帯状疱疹(ほうしん)を発症しました。そこで、女性は手紙や電話で何度もバルコニーでの喫煙をやめるよう求めましたが、真下に住む60歳代の男性は応じようとしませんでした。

逆に、男性は「使用細則にバルコニーでの喫煙を禁じる規定は書かれていない」と主張。たばこを吸いながら景色を眺める楽しさや私生活の自由を挙げ、違法性はないと反論しました。確かに、バルコニーはマンションの共用部分ではあるものの、同時に専用使用権が認められており、その住戸の居住者が排他的(独占的)に使用することができます。マンション生活のルールを定めた管理規約や使用細則に抵触しない限り、通常の使用方法の範囲内で自由な使い方が認められています。

とはいえ、他の居住者の健康を脅かすほどの行為までは認められず、生活妨害が顕著な場合には「共同の利益」に反する行為と見なされます。同じ屋根の下で生活する以上、ある程度の範囲ではお互い我慢しなければなりませんが、受忍限度を超える場合には「共同の利益」に反することになります。
共同の利益に反する行為

 

結論として、今回の裁判では原告女性の主張が認められました。精神的な損害への慰謝料として被告男性に5万円の支払いが命じられました。ということは、今後、バルコニーでたばこを吸うと、訴えられてしまうのでしょうか?―― 真相を確かめるべく、次ページで名古屋地裁の判決内容をひも解いてみます。