野鳩がフンをまき散らし、居住者は洗濯物をバルコニーに干せなくなる 

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バルコニーで野鳩に餌付けをしたため、フン害によりマンション住民は洗濯物をバルコニーに干せなくなった(イメージ写真)

本題に入る前に、1つ分譲マンションのバルコニー使用をめぐる別の裁判例をご紹介します。1995年11月、バルコニーで野鳩の餌付けを続ける居住者に対し、専有部分の引き渡しと損害賠償を命じた東京地裁の判決です。

訴えられたのは、親(区分所有者)からマンション内の住戸(専有部分)を使用貸借して住んでいた子供です。他の区分所有者から何度も注意されたにもかかわらず、数年にわたりバルコニーや室内で野鳩に餌付けをし続けました。

そのため、マンションおよびその付近に野鳩がフンをまき散らすようになり、周辺の住民は洗濯物をバルコニーに干せなくなりました。また、屋根や雨どいにはフンがつまって悪臭を放つなど、平穏かつ清潔な環境が損なわれる事態となりました。

そこで、訴訟へと発展。東京地裁は「数年間にわたりバルコニー等で野鳩の餌付けを反復継続する行為は、マンションにおける共同生活上、著しい障害を生じさせる原因」と認定。「共同の利益に反する行為であり、不法行為を構成する」として、被告に専有部分の引き渡しと損害賠償を命じました。

つまり、「このマンションから出て行け」―― というわけです。義務違反者に対する措置としては、かなり重い判決が言い渡されました。抗議や警告を聞き入れない反抗的な態度と、周辺住民にもたらした損害の甚大さに鑑(かんが)みた判決内容となりました。

はたして、バルコニーでたばこを吸う行為は違法なのか……(?) 

話を本題に戻し、バルコニーで吸うたばこの煙が原因で体調を崩したとして、女性が提起した裁判でも「不法行為」の該当性が問われました。不法行為とは、故意または過失により他人の権利を侵害する行為です。不法行為が成立するためには以下の成立要件が必要となり、不法行為が成立すると、侵害した行為者はその侵害から生じた損害を賠償しなければなりません。

<不法行為の成立要件>
 (1)故意または過失が存在する
 (2)違法性がある
 (3)損害が発生している
 (4)行為と損害の間に因果関係がある
 (5)行為者(加害者)に責任能力がある

判決文を整理すると、名古屋地裁の裁判長は「マンションに居住しているという特殊性から、原告女性もたばこの煙が室内に流入することについて、ある程度は受忍すべき義務がある」と、まずは被告男性を擁護しました。

その一方、「たとえ自己所有のマンションといえども、いかなる行為が許されるわけではなく、その行為が第三者に著しい不利益を及ぼす場合には、使用制限が加えられることはやむを得ない」と男性を糾弾。「他の居住者に著しい不利益を与えることを知りながら喫煙を続け、迷惑行為を防止する措置を取らない場合には、喫煙が不法行為を構成することがあり得る」として、不法行為の成立を認めました。バルコニーでの喫煙が女性に精神的損害を与えたと認定したのです。「受忍限度を超え、違法である」として、被告に精神的な損害への慰謝料を支払うよう命じました。
☆印
共用部分でありながら、他方、専用使用権という排他的権利が認められるバルコニー。そのバルコニーの使用制限について、一石を投じたのが今回の裁判です。

あくまで私ガイドの私見ではありますが、バルコニーでの喫煙そのものに違法性はないと考えています。「受動喫煙」が問題視されるように、当人が望まない状態でたばこの煙を吸わされるという、上階女性に健康被害が発生している点に問題の本質があります。バルコニーでの喫煙をやめるよう何度も注意されながら、聞く耳を持とうとしない男性の悪態に問題の根深さを感じます。

冒頭で触れたように、分譲マンションにはいくつもの権利・利用形態が混在し、また、1つの建物が多くの人々によって区分所有されるため、居住者の多様な価値観を意思統一するのは容易でありません。居住者間の摩擦をゼロにするのは不可能なのです。こうした現状認識のもと、その利害調整役として管理組合がどれだけ活躍できるかが、トラブル低減のカギを握ります。ホタル族の多いマンションでは、バルコニーでの喫煙について一定のルールを作成しておくと安心です。

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