耐震、制震、免震の違い
日本では地震の揺れから人と建物を守るため、建築基準法において耐震基準が定められている。そこでは、震度5強の地震なら建物へのダメージが軽微な損傷で済むこと、震度6強や7程度の大地震でも損壊しない耐震性能を持ち合わせていなければならないとしている。「耐震」とは文字通り、揺れに耐える強度を確保した構造の概念である。これに組み合わさる考え方として、ダンバーなどの制震装置を建物の内部に取り付け、振動のエネルギーを低減させる「制震」、地面と建物を絶縁し、その間に地震の揺れを吸収する免震装置(アイソレーター)を取り付け、建物へ地震の力を伝わりにくくする「免震」がある。
免震で用いられる装置
超高層建築物に採用されることが多い制震に対し、「免震」は地盤の揺れを1/3~1/2程度に軽減させる効果があることから、住宅はもとより、貴重な芸術品を震災から守るために、既存の美術館に採用(改築)された実績もある。免震建物は、揺れを伝えにくくするとともに建物の位置を元に戻すはたらきをする「免震装置」と、いつまでも揺れ続けないよう振動を抑える役割を果たす「ダンパー」との組み合わせで構成されている。
免震装置は現在3種類が存在する。ゴムと鋼板の重なりからできた「積層ゴム支承」。これはマンションのHPや広告物で目にする機会が最も多いであろうものだ。次に、摩擦係数の低いテフロン素材をはさんだ「すべり支承」。そして球体を用いる「転がり支承」である。
マンションのような大きな建物では、「積層ゴム支承」か「積層ゴム支承」と「すべり支承」の組み合わせが適用される場合が大半である。ちなみに「支承」とは上部構造と下部構造の結合部分に設置する部材のことをさす。
ダンパーは「鉛ダンパー」「鋼材ダンパー」「オイルダンパー」がある。「積層ゴム」の中心部分にダンパーが埋め込まれた画像が免震マンションの説明によく登場すると思うが、これは「鉛ダンパー」と「積層ゴム支承」を合体させた免震装置である。
次のページでは、免震装置の役割と免震建物の利点を。