ロマネスク様式からガウディまで、カタルーニャ美術館
頭文字をとってMNACとも呼ばれるカタルーニャ美術館は、11世紀から13世紀初めにヨーロッパで栄えたロマネスク様式の作品のコレクションで有名です。ロマネスク様式の作品とは、私たち日本人には少し馴染みが薄いキリスト教がテーマになったもの。宗教画は苦手……と思う方でも、壁画を移設した巨大な作品や、世界遺産のカタルーニャ州北部の教会群を、設計が分かるよう半分に裁断した等身大の模型があったりと新たな発見が満載です。ロマネスク様式だけでなく、ゴシック、ルネッサンス、バロック、モダンの各様式ごとに数々のコレクションが並び、さらにはポスターやコインまでなんとトータル2250,000点もの作品が展示されている、かなり見応えのある美術館。ピカソやダリの絵画やガウディがデザインした家具などまであるんですよ。
しかも建物は、モンジュイック国立宮殿という1929年の万博の際に建設された、歴史あるゴージャスな建築物なので、のんびり鑑賞するだけでも優雅な気分に浸れます。
カタルーニャ美術館の身どころ
絶対に見ておきたいのは、美術館の目玉、ロマネスク様式の壁画。タウールが描いたサン・クリメント教会の全能のキリスト(Absis central de Sant Climennto)は、絵画に奥行きをもたせる鮮やかな色彩が特徴で、あのピカソも賞嘆したとか。ゴシック様式の作品のなかでは、まずマヨルカ征服の立役者(Mestre de la conquista de Mallorca)。バルセロナ市内の個人宅アギール邸にあった、初期のカタルーニャ地方の絵画で1229年に描かれています。
また14世紀にカタルーニャ州を代表する彫刻家だったジャウマ・カスカルス作のキリストの頭(Cabeza de Cristo)。繊細な表情がとてもリアルで、キリストは本当にこういう顔をしていたように思えてきます。
スペイン南部コルドバ出身の画家バルトロメ・ベルメホ作の油絵キリストの復活(Resurrecció de Cristo)も必見。これはキリストがちょうどお墓からとび出す奇跡の瞬間を描いたものなのですが、キリストの表情や仕草がユニークで面白い。
ルネッサンス/バロック様式の絵画では、スペインを代表するバロック様式の巨匠ディエゴ・ベラスケスのサン・パブロ(San Pablo)。17世紀に王室画家として活躍した画家でプラド美術館にもあるベラスケスの作品が、バルセロナでも見られます。
ベラスケスと同じ時期に同じ様式で活躍した、フランシスコ・デ・スルバランの無原罪の受胎(Inmaculada Concepción)も見る価値あり。宗教画と静物画を得意とした画家で、作品はプラド美術館でも展示されています。
さて次はお待ちかねの著名なアーティストの作品があるモダン様式です。まずは、ピカソをはじめとする19世紀末のアーティストたちのたまり場だったカフェバル「クアトロ・ガッツ」に飾られたラモン・カサスのラモン・カサスとペレ・ロメウ。二人乗りの自転車に乗る二人の様子を描いたもの。
カサ・バトリョで使用するためにガウディがデザインした二人がけの木の椅子は、館内で目立つのですぐに見つけられるでしょう。
1937年に描かれたピカソの帽子の女と皮の首(Dona amb barret i coll de pell)は、色鮮やかで風変わりな、私たちがイメージするピカソらしい作品です。
ダリがシューレアリズムの世界に入る前に描いた父親の自画像(Retrato de meu pare)も、ダリの違う一面を見せてくれる作品。
アート鑑賞の後は、周辺散策
カタルーニャ美術館は、モンジュイックの麓にあるので、美術館の入り口付近からスペイン広場を前面にしたバルセロナの街が見渡せます。天気のいい日は、まるでローマのスペイン広場のように、美術館前の階段に座り込んでぼんやり景色を眺めたり、街頭アーティストのギターの音色に耳を澄ましたりと人々の憩いの場。ここで一休みしてもよし、美術館のちょうど裏側はオリンピック競技場なので、そこまで散策してもよいでしょう。<DATA>
■Museu Nacional D'art de Catalunya(カタルーニャ美術館)
住所:Palau Nacional Parc de Monjuic
TEL:(34) 93 622 0360(34) 93 622 0360
閉館日:日曜、1月1日、5月1日、12月25日
開館時間:火曜~土曜10:00~19:00 日曜10:00~14:30
入館料:12ユーロ
アクセス:地下鉄1、3号線Pl.Espanya 徒歩10分