余命宣告をされたとき、人の気持ちはどうなる?
死の事実を受け入れるまでには5つのプロセスをたどる
アメリカの精神科医師であるキューブラー・ロスは、著書『死ぬ瞬間』の中で、自らの臨床研究で余命を知った多くの患者たちが、次のような5つの心理的プロセスをたどったと伝えました。これは、後に『受容のプロセス』として呼ばれるようになりました。要約すると、次のような内容になります。
1. 否認と隔離
死が近いと知ると非常に大きなショックを受け、「そんなことありえない!」「何かの間違いに決まっている」と否認する。また、孤立してコミュニケーションを避けるようになる。
2. 怒り
「どうして私だけがこんな目にあわなければならないの!」「なぜあの人は元気なのに、私だけが!!」というように怒りの感情が噴出する。そして、見るもの聞くもの、あらゆるものに対して怒りを感じ、その感情を周囲にもぶつける。
3. 取引
何かを条件にすることで、延命や回復の奇跡を期待する。神にすがったり、何かのよい行いをすることで奇跡を得ようとする。「もう一度だけ○○ができれば、運命を受け入れます」などと、期限を条件に願いをかけることもある。
4. 抑うつ
死を避けることができないと知り、さらに病気の症状が悪化して衰弱してくると、絶望的になって非常に強く落ち込む。命とともに、築いてきたものをすべて失う喪失感が襲い、悲しみの底に沈む。
5. 受容
体は衰弱しきり、感情はほとんどなくなる。誰かと話したいという気持ちもなくなり、自らの死の運命をそっと静かに受け入れ、最後のときを穏やかに過ごそうとする。
迫りくる死の運命を知ると、衝撃、怒り、期待、絶望といった感情が噴き出します。しかし、最後のときにはそうした一切の激しい感情から解き放たれ、静かに自分の運命を受け入れる、とロスは説きました。
後年、こうした心理的プロセスは、「障害」の事実を知ったときにも現れると考えられるようになりました。それが、「障害受容のプロセス」と呼ばれるものです。次のページでご紹介しましょう。