確定申告で使う「分離課税申告書」の記入方法を解説

土地・建物の譲渡、株式の譲渡、申告分離課税を選択した上場株式の配当、先物取引、山林所得、退職所得がある場合には、所得税の「確定申告書B様式」の他に「申告書第三表(分離課税用)」(以下、分離課税申告書)を記載して、申告手続きをする必要があります。

この記事では、国税庁ホームページで公開されている「国税太郎さん」の記載例をもとに、分離課税申告書の記載の流れを解説します。

▼書式のダウンロードはこちらから(いずれもリンク先は国税庁ウェブサイト、PDFファイル)
確定申告書B様式申告書第三表(分離課税用)

はじめに確定申告書B様式(第一表・第二表)へ記入

まずは「確定申告書B様式」の記入方法について、簡単に触れておきましょう。

今回の申告者、国税太郎さんの前提条件(分離課税の対象となるもの以外)は下記のとおりです。 これらの要素はすべて、年末調整で正しく処理されていれば、源泉徴収票から読み取ることができます。

H29年源泉徴収票記載例(出典:国税庁)

H29年源泉徴収票記載例(出典:国税庁)


●給与の年収 7,140,000円     
●給与所得金額 5,226,000円 
●社会保険料控除 1,073,196円
●生命保険料控除 105,000円
●地震保険料控除 21,000円
●配偶者控除 380,000円
●特定扶養控除 630,000円
●基礎控除 380,000円
●源泉徴収税額 160,9500円

源泉徴収票から読み取れる部分をまずは記載(出典:国税庁記載例より)

源泉徴収票から読み取れる部分をまずは記載(出典:国税庁記載例より)

これらの項目が分かったところで、あとは確定申告書B様式の第一表の左半分、つまり「収入金額等」「所得金額」「所得から差し引かれる金額」へそれぞれ転記すればOKです。



 
また、確定申告書B様式の第二表にも、源泉徴収票から対応する記入欄に転記していきます。住所や氏名のほか、給与(収入金額)や源泉徴収税額、社会保険料控除などの所得控除などです。なお、住民税の算定にかかわるため、16歳未満の扶養親族の有無についても忘れずに記入しましょう。なお、平成28年分以降の申告書から控除対象配偶者およに扶養親族(上記16歳未満の年少扶養親族含む)のマイナンバーの記載が申告書にもとめられています。確定申告書を作成する場合には事前の用意しておくといいでしょう。
第二表の記載は源泉徴収票記載項目の詳細です(出典:国税庁記載例)

第二表の記載は源泉徴収票記載項目の詳細です(出典:国税庁記載例)



 

次に、分離課税申告書の「収入金額」「所得金額」を記入

ここからは、「分離課税申告書」の記入方法について解説します。国税太郎さんの分離課税の対象となるものの各条件は、以下のとおりです。

●土地・建物の短期譲渡
収入金額:6,000,000円 / 所得金額:975,000円
●土地・建物の長期譲渡
収入金額:9,800,000円 / 所得金額:7,900,000円
●未公開株の譲渡
収入金額:1,200,000円 / 所得金額:562,000円
●上場株の譲渡
収入金額:24,600,000円 / 所得金額:6,000,000円
●先物取引
収入金額:1,800,000円 / 所得金額:600,000円
●山林所得
収入金額:27,400,000円 / 所得金額:10,032,500円

これらの要素は、分離課税申告書のそれぞれの収入金額と所得金額の欄に記入します(図を参照)。
株式、不動産別々に記載します(出典:国税庁記載例より)

株式、不動産別々に記載します(出典:国税庁記載例より)


税額を計算し、分離課税申告書の「税金の計算」欄に記入

社会保険料控除から基礎控除までの所得から差し引かれる金額(以下、所得控除)の合計は2,583,514円。給与所得5,226,000円からこの所得控除を全て差し引くことができます。

したがって、分離課税の各所得から差し引ける所得控除の金額は存在しないので、それぞれの分離課税の所得金額に、それぞれの税率を課して税額を計算します。内訳は下記の通りです。

●土地・建物の短期譲渡所得金額に係る税額
975,000円×30%=292,500円…(79)
●土地・建物の長期譲渡所得金額に係る税額
7,900,000円×15%=1,185,000円…(80)
●未公開株の譲渡所得金額に係る税額
562,000円×15%=84,300円(※)…(81)
●上場株の譲渡所得金額に係る税額
6,000,000円×15%=900,000円(※)…(81)
●先物取引の所得金額に係る税額
600,000円×15%=90,000円…(83)
●山林所得の所得金額に係る税額
10,032,500円×1/5×超過累進税率×5=515,700円

※記入例では、未公開株の譲渡所得金額に係る税額と上場株の譲渡所得金額に係る税額は合算して表記(984,300円)

そしてこれらに、
●給与所得に代表される総所得金額の所得控除後の金額に係る税額
(5,226,000円-2,589,196円)=2,636,000円
2,636,000円×10%-97,500=166,100円…(78)
が加えられ、税額3,233,600円が確定します。
分離課税が煩雑なところは税額計算も別々になる所です(出典:国税庁記載例)

分離課税が煩雑なところは税額計算も別々になる所です(出典:国税庁記載例)


ちなみにここで算定された166,100円ですが、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄に記載された169,500円とは一致しません。復興特別所得税2.1%が付加されているため(166,700円×1.021=169,500円 100円未満端数切捨て)ですが、個々の税額計算の段階では復興特別所得税は付加しません。

税率が課せられる前の金額のことを「課税所得金額」といいますが、分離課税用の申告書の左下を見ると、千円未満の数値にすでに0が印字されています。この段階で、千円未満の端数が切り捨て処理されます。

再び、申告書B様式へ。復興特別所得税も忘れずに

分離課税申告書で計算された3,233,600円を、確定申告書B様式(第一表)の右上部へ転記します。そして、この確定税額3,233,600円にまず、復興特別所得税を加算します。

3,233,600円×2.1%=67,905円…(41)
3,233,600円+67,905円=3,301,505円…(42)

ここから、すでに給与天引きなどで処理されている源泉徴収税額169,500円(44)を差し引き、最終的な納付税額3,132,000円(47)が算出されます。
税額計算は最後にとりまとめて第一表で(出典:国税庁記載例より)

税額計算は最後にとりまとめて第一表で(出典:国税庁記載例より)


記入欄(47)には百円未満の数値にすでに0が印字されています。納税額が生じる場合、百円未満の端数が切り捨て処理されるのです。ただし還付税額がある場合は端数処理されず、きっちり1円単位まで還付されます。

分離課税申告書の記載を始める前に

分離課税申告書の作成も、各所得の要素がきっちり計算されていれば、恐れることはありません。ただし、分離課税にはいろいろな税法上の特例がありますし、特例があることによって、今回の記載例で使用された税率と異なる場合も出てきます。

土地・建物の譲渡、株式の譲渡、申告分離課税を選択した上場株式の配当、先物取引、山林所得、退職所得がある場合には、次の3つを心得た上で申告書作成にとりかかりましょう。

●確定申告書B様式を書く
●分離課税申告書を書く
●該当する各種所得について適用できる特例を誤りなく適用する

特に特例の活用を検討する際には、税務署等にて関連する書類をすべて開示した上で、確認をとりながら申告書作成にとりかることをおすすめします。


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