モデルルームをつくらない小規模マンションと
つくる大規模マンション
そのため、小規模マンションはモデルルームをつくらず、キッチンなどの設備の一部をサンプルとして展示するサンプル・ルームにとどめたり、新聞・雑誌などのマスメディア広告をやめて、地元中心の集客に重点をおいたポスティングにシフトしたりして、広告宣伝費を縮減します。もちろん派手なパンフレットなどもつくらず、販促ツールも可能な限り簡素化します。反面、大規模マンションは有名な映画俳優をイメージキャラクターにたてて大々的なCMを展開したり、巨大な販売センターをつくりプロモーションビデオを流したり、数種類にも及ぶパンフレット類を豪華な化粧箱に入れて見学者に渡したりします。
こうして見てくると、小規模マンションの広告宣伝や販促ツール、モデルルームが地味な理由はある程度納得できるのではないでしょうか。
大規模マンションの広告・宣伝費による、
買い手と売り手のジレンマ
一方、大規模マンションの派手なアプローチは、大量の集客をしなければ、全住戸を完売することが難しいという理由によるものといえるでしょう。ですが、広告・宣伝費は物件価格に転嫁されているものであることは間違いありません。買う側の立場としては、少しでも安く売ってもらいたい、そのために、この広告宣伝費を出来る限り切り詰めて欲しいと思います。
一方、売る側の立場としては、切り詰めれば販売がうまくいかなくなるというジレンマがあります。この二律背反の命題をどう現実的に処理していくかが、不動産会社のマーケティング力となるのです。適切な購買ターゲット設定、売れ筋を押さえた価格設定、ターゲットに好まれる商品企画、短期間で効率よく売りさばく販売企画が、分譲マンションをてがける不動産会社の能力のみせどころとなるのです。
華美すぎないマンションは、販売経費エコマンション
そうした点からみて、大規模マンションにもかかわらず、販売センターが簡素で、モデルルームやパンフレットなどの販促ツールも華美過ぎないマンションは、販売経費を効率化し、極力価格を抑えようとしているひとつの表れと解釈できるでしょう。また、青田売りで即日完売する物件は、価格設定が安すぎたことの証ともされます。概ねマンションが完成するまでに、全ての住戸が完売するペースでのマーケティングが理想とされています。もし、あなたが検討中のマンションで、完成まじかで売り出し住戸の残戸数があと数戸、というマンションは買って納得の物件といえるでしょう。
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