「苦しいとき」は誰にでも訪れる
複数の要因が重なると、生きるのも苦しくなる
苦しさを1人きりで抱えると、最悪なことを考えてしまうものです。たとえば、自殺もその一つ。わが国に「自殺者数3万人台」という数字が10年以上も続いているのは、そもそも日本人の意識の中に、「問題が起きたときに、他人に迷惑を掛けてはいけない」という強い思い込みがあるためではないでしょうか。
自殺により亡くなった1,000人の方の遺族等を調査し、その結果を分析した「自殺実態白書2008」(自殺対策支援センター ライフリンク)によると、自殺者1人あたり、平均4つの自殺危機要因を抱えていたことが分かりました。その危機要因全体のおよそ7割が、次の10の要因に集中していることも分かりました。
1. うつ病
2. 家族の不和(親子間+夫婦間+その他+離婚の悩み)
3. 負債(多重債務+連帯保証債務+住宅ローン+その他)
4. 身体疾患(腰痛+その他)
5. 生活苦(+将来生活への不安)
6. 職場の人間関係(+職場のいじめ)
7. 職場環境の変化(配置転換+昇進+降格+転職)
8. 失業(+就職失敗)
9. 事業不振(+倒産)
10. 過労
この調査では、こうした複数の危機要因(自殺者平均で4つ)が絡み合い、自殺へと追い込まれていくと分析されています。
追いつめられたとき、1人で答えを出すのが危険なわけ
1人きりで出す答えは、合理的でないことが多い
あくまでも一例ですが、配偶者を失って出口を見失う、ある妻の思いを例示してみましょう。
配偶者を失った
↓
生活が苦しい、子どもの養育費が出せない
↓
自分の問題を人に頼ってはいけない
↓
貯金とパートでなんとか凌ぐしかない
↓
貯えが尽きたら、もう死ぬしかないのだろうか…
このように「人に頼ってはいけない」という思いが、さらに「自分の力だけで切り抜けなければならない」という信念を生み、困難な事態になると「人に迷惑をかけないためにも、死ぬしかない」と、極端な信念に自分を追い込んでいくのではないでしょうか。
1人きりで考えていると、この信念が非常に強固になりやすく、抑うつ化も進んでしまいます。すると、「少し目線を変えれば他の選択肢もある」ということが分からなくなってしまうのです。
このように追いつめられた苦しさから抜け出すために必要なこと。それは、まず信頼でき、話を聴いてくれる人、そしてその問題に関する専門的な知識を持つ人や機関に「つながること」ではないでしょうか?
次のページでは、具体的な「つながり先」についてお伝えしたいと思います。