「ありのままの自分」になれる導き、それが「絵本」 

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絵本が気づかせてくれる心の底にある願いや望みとは?

最近、自分のために「絵本」を読んでいますか?

絵本は、あらゆる本の中で最もシンプルに、最も印象的に「自分との対話」に使える素材の一つ。たとえば、「毎日は順調だけれど何か物足りない」「大切な何かを忘れているような気がする」……こんな、モヤモヤした思いの原因に気づくためのきっかけに使えます。

名作の絵本は、飾らない、素の自分と向き合う「鏡」のような役割を果たし、多くの人の心の深い部分にある願いや希望に気づかせてくれる力を持っています。だからこそ、名作は子どもが読んでも理解することができ、大人が読むと「ああ、そうだったのか!」と目からうろこが落ちるような思いになるのでしょう。また、名作の絵本が世代を超えて受け継がれ、世界中の人たちの共感も呼ぶのもそのためだと思います。

では、「ありのままの自分」と向き合うための、導きとなる絵本にはどんなものがあるのでしょう?

先だって、女性週刊誌『アンアン』1741号の特集「大人女子のための傑作絵本7冊」の中で、私は20代女性にお勧めしたい絵本として、『ビロードのうさぎ』(マージェリィ・W. ビアンコ 文、酒井 駒子 絵・ 訳、ブロンズ新社)、『つみきのいえ』(平田 研也 文、加藤 久仁生 絵、白泉社)、『ぐるんぱのようちえん』(西内ミナミ 文、堀内誠一 絵、福音館書店)の3冊を紹介しました。

このコーナーでは、2つのテーマに分けて、大人にこそお勧めしたい珠玉の絵本を4冊ご紹介したいと思います。


テーマ1:「私に足りない何か」に気づく 

「あれもこれもやり、欲しいものは手に入れた。行きたいところにはどこにでも行った……でも、何かが私に足りない」こんな思いを抱く大人は多いものです。人もうらやむ実績や体験、物質的な豊かさの中には得られない、「私がかけがえのない私」であるための証とは? そのヒントを与えてくれる2つの絵本を紹介します。

『ルピナスさん—小さなおばあさんのお話』
(バーバラ・クーニー 著、掛川恭子 訳、ほるぷ出版)

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自立して活躍する女性が「ルピナス」に魅かれたのはなぜ?

「ルピナス」とは、まるで藤の花がたてに咲いたように花穂をつける多年草の植物。初夏になると、ピンクや紫色の美しい花が咲き、見る人を和ませてくれます。そんなルピナスと同じ名前で呼ばれる、おばあさんのお話です。

主人公の女性、ミス・ランフィアスは子どもころ、おじいさんとある約束を交わします。自立した女性となって仕事を持ち、数々の胸が躍るような経験を重ねていった彼女は、あるきっかけから一番大好きな花、ルピナスに深く思いを寄せるようになります。そして年をとり、いつしか村の人から「ルピナスさん」と慕われるようになったミス・ランフィアス。おじいさんと交わしたある約束と、おばあさんが「ルピナスさん」と呼ばれるようになった理由に、この物語のテーマが隠されています。

日々を生きている私たちは、いったい何のためにかけがいのないいのちを使って生きているのでしょうか? そんな問いに向き合わせてくれる、美しい絵本です。


『100万回生きたねこ』
(佐野洋子 著、講談社)

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見た目も立派、経験も豊富…そんな誇りすら吹き飛んだ猫の最後の人生とは?

とっても奇妙なタイトルを持つ、ある猫の死と再生のお話。100万回も人生を重ねてきた立派なとら猫は、それぞれの人生で飼い主にかわいがられながら育ちます。しかし、猫自身は与えられた人生をとても冷静に見つめてきました。

最後に、猫はある生まれ変わりによって、「誰のものでもない自分自身」を生きます。そして、猫が自慢にしてきた100万回もの過去が吹き飛んでしまうくらい、猫に衝撃を与えたある出会いを経験するのですが……。

私たちの心を満たしてくれるのは、「立派な自分像」でしょうか? 数々の「経験」や「実績」でしょうか? また、与えられた「豊かさ」なのでしょうか? この物語の衝撃のラストが、そのヒントを教えてくれます。

次のページでは、「死」について考えさせてくれる2冊の絵本をご紹介します。