助けて!と叫んでも…
「助けて」というのは、誰かに助けてもらいたいということ。生命に関わるような事態に直面したとき、人は思わず「助けて」と叫ぶものです。これは攻撃してくるものに対して慈悲を乞うという意味もあります。「やめて、助けて」というものですが、すでに攻撃態勢に入っている相手に助けるという気持ちはないものと思わなくてはなりません。「助ける」くらいなら、「助けて」と言われてやめるくらいなら初めから襲わないということです。つまり襲撃者に対してはまったく無意味な言葉と言えるでしょう。
もちろん、「誰か」「誰でもいいから私を助けて・・・」ということで思わず口をついて出てしまうものですが、効果のほどはというとほとんど期待できないと認識しておきましょう。仮に、自宅の窓の外から「助けて~」という女性の声と逃げて走る足音が聞こえたとして、あなたは助けに行くでしょうか?
救助者の安全確保
体力に自信があり武道の心得があり、正義感に満ちた人物ならあるいは「どうした!すぐ助けに行くぞ」と走って出て行くこともあるかもしれませんが、普通の人は(どうしよう?警察に電話した方がいいかな)くらいは考えても、物音がそれっきりになってしまったら、(大丈夫だよな。別に警察に連絡しなくても。どうせ痴漢かなにかだろう)と思って、忘れたことに、聞かなかったことにするのではないでしょうか。また救助の原則として、「救助者の安全確保」というものがまずあります。救助者が被害を受けてしまったり、生命に危険な事態になってはいけないのですから、むやみに外に出てかえって予期せぬ被害を招いてもいけないのです。
ある事件
先頃発生したT県での女子大生殺人事件は、刃物で襲撃されて自宅アパートの周囲を血だらけになりながら「助けて」と叫びながら逃げまどい、あげく絶命してしまった悲惨な出来事でした。付近の住民の多くが彼女の悲鳴を聞いていながら、誰も助けることは出来なかったのです。テレビのインタビューで、
「近くにいて、助けてという声を聞きながら何もしてあげられなかったことが悔やまれます」
と答えていた人がいましたが、これを責めることは出来ないでしょう。
助けて!ではわからない、通報しない…
「助けて」と聞こえても、「何を」「どう」助けてほしいのか、ということはわかりません。また、仮に「人殺しー、助けて」と聞こえた場合、なおのこと自分にも危害が及んではと、ますます出て行くことはしないでしょう。ただし、「人殺し」などと聞こえたら、警察に110番通報することには躊躇しないでしょう。「今、外で人殺し、助けてと聞こえました」と伝えることは難しくはないはずです。ただ「きゃー」や「助けて」では「今、外で女性の声で助けてと聞こえたのですが」と通報することはできるでしょうが、痴話喧嘩かもしれないし、逆に通報した側の住所氏名電話番号などを聞かれることやその後の面倒なことを思えば、やはり(聞かなかったことにしよう)と考えてしまうのではないでしょうか。
→いざというときは、こう叫べ!