求人にまつわる法的規制とは

募集時にも労働条件の明示が必要

募集時にも労働条件の明示が必要

採用場面では、様々な法律上の規制があります。ここでは求人にまつわる法的規制をまとめてご紹介します。求人段階では、まだ採用(雇用)に至っていませんが、労働者保護の観点から各種の規制があります。これらの規制を守らないと、望む人材が集まらないばかりか、企業の信用自体を低下させることにもなりかねません。以下に詳しく説明します。

求人申込時に明示が必要な労働条件とは

公共職業安定所(以下ハローワーク)や民間の人材紹介会社、人材派遣会社などに求人の申込みをする場合、職業安定法にもとづき、以下の6項目を明示しなければなりません。

職業安定法は、労働力の需給調整の適正化を図るために、ハローワークでの職業紹介業務や民間の職業紹介事業者を規制している法律です。労働条件明示の目的は、求職者に求人企業の労働条件をあらかじめ明示することで、適切な職業選択を行えるようにすることにあります。

■明示すべき労働条件

  1. 労働者が従事する業務内容
  2. 労働契約期間
  3. 就業場所
  4. 始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間及び休日
  5. 賃金額など
  6. 健康保険、厚生年金保険、労災保険及び雇用保険の適用の有無

上記の6項目は、求職者が求人に応募するかどうか判断する際に必要な基本的な労働条件です。ハローワークや人材紹介会社などでは、上記の明示がない求人申込は受理されません。

ハローワーク経由で募集する場合、求人申込書の所定事項を洩れなく記載すれば必要明示事項をすべて満たせます。心配無用です。なおハローワークでは、企業から明示された上記6項目に加え様々な企業情報を、「求人票」という形で施設内の検索端末や、ハローワークインターネット上で公開しています。故意に虚偽の記載を行った場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられます。注意して下さい。

求人誌などで募集する際の労働条件明示テクニック

募集を行う際に上記6項目の明示が必要なのは、ハローワークまたは民間の人材紹介会社などの場合だけ。一般の求人誌、新聞、フリーペーパーで募集する場合は不要です。求人広告を掲載するスペースが限られ、そこまで法律で強制できないからです。

求人誌などで募集を行う場合でも、上記の6項目は明確にしておきましょう。求職者の関心が強く、面接時に必ず質問を受けます。その際にあいまいな返答をしてしまうと、信用のおけない企業と思われるだけでなく、採用後に必ずトラブルになります。

ある中小企業では、雑誌広告で求人を行ったところ、首尾よく選考基準に見合う人材が見つかり、その後の面接を経て採用となりました。しかし入社直後に面接時の条件と違うと辞められてしまいました。面接時に求職者から「正社員ですか?」と質問を受け、「正社員です」と説明しましたが、実際は1年更新の契約だったからです。担当者としては他の労働条件は全て正社員と同じだったので、問題ないと考えていました。

求人誌・新聞などの求人広告は、広告枠スペースの制約もあり、全ての労働条件を事前に明示することはできません。その場合、少なくとも面接の段階までに、上記6項目を記載した書面を交付するといいでしょう。せっかく面接を行っても、最初から条件が合わないのであれば無駄です。

実務上は、自社のホームページに求人条件を掲載しておき、応募者に見てもらうように誘導するといいでしょう。

性差別とならない募集方法とは

性差別禁止

募集時の性差別表現は禁止です

労働者が職業生活の入口である募集・採用の段階で、性別によって差別されることのないように、男女雇用機会均等法は「事業主は、労働者の募集および採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない(5条)」と定めています。

具体的には、厚生労働大臣の指針で次の募集・採用方法が性差別として禁止されています。

  1. 募集・採用に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること
  2. 募集・採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること
  3. 採用選考において、能力及び資質の有無などを判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること
  4. 募集・採用に当たって男女のいずれかを優先すること
  5. 求人内容の説明など募集または採用に関する情報提供で、男女で異なる取扱いをすること

上記の指針を参考に、性差別とならない募集方法を選択しましょう。

性差別表現に気をつけましょう

法律が禁止するのは性別による差別ですから、女性差別はもちろん男性を除外することも許されません。以前は「看護婦さん」「保母さん」という呼称だった職種が「看護士」「保育士」と変わったのも、女性を特定する「婦」「母」がこの法律に抵触するからです。

同様に、「セールスマン募集」「ガードマン急募」などの表現も許されません。「営業社員」「警備員」としなければなりません。少し細かいですが、「男性歓迎」や「女性向きの仕事」などの表現も指針違反となります。男女いずれかを誘引するような表現は許されません。

上記のような表現の求人は、ハローワークで受理されず、その場で訂正を求められます。民間の求人誌などに広告掲載を依頼する場合も、同様に変更を求められます。

しかし世の中には、女性オペレーターのみのコールセンター、女性の保育士のみの保育園などもあります。このような会社の求人広告を見ると、数十人の女性が並んで対応しているコールセンターの職場写真や、幼児と遊ぶ女性の保育士のイラストなどを掲載し、女性の職場を印象付けているケースが多いようです。

上記のような写真やイラストで、「女性向きの仕事」をアピールしている求人であったとしても、男性が求職の申込みをしてきた場合は拒否できません。女性と同様に、書類選考あるいは面接などを行うことになります。

均等法違反による制裁に注意

男女雇用機会均等法が求めるのは、その名のとおり「機会の均等」だけです。企業には採用の自由があるので、最終的に誰を採用するかは企業の判断。男女を分け隔てなく募集し、公平に選考した結果、採用者が全員男性(あるいは女性)となっても適法です。

均等法では、「厚生労働大臣が、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる(法29条)」と定めています。事業主が報告をせず、または虚偽の報告をした場合は、「20万円以下の過料(法33条)」が科せられます。また「勧告」を受けた事業主が勧告に従わなかったときは、厚労省のサイトなどで社名公表されます(法30条)。

均等法には「機会の均等」違反に対する直接的な罰則はなく、報告義務違反の場合に「過料」(軽い行政罰)が科せられるだけです。ただし「機会の均等」違反の企業は行政指導を受け、最終的に勧告に従わない場合は社名公表され、社会的制裁を受けます。

<参考>
「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18.10.11厚労告614号)」

募集時の年齢差別禁止とその例外

2007(平成19)年に改正された雇用対策法により、従業員の募集・採用を行う際の年齢制限は、原則禁止。この「年齢不問」原則は、求人広告にも適用されます。

中高年の再就職は若年層に比べて厳しいといわれていますが、能力以上に年齢がネックになっていることが多いからです。年齢差別を原則禁止することで、職務と適性・能力・経験・技能を適切にマッチングさせ、中高年の再就職の促進を図ろうとするのが主旨です。

ところでこの年齢差別禁止原則には、いくつかの例外があります。たとえば、若年者が少なく高齢者の技能の継承が問題になっている会社で、年齢の高い人を採用するのはあまりに不合理です。劇団などで子役を雇用する場合に、年齢不問で募集することは意味のないことです。

このように年齢制限を設けることに合理的理由がある場合は、年齢を限定して募集することが可能。ハローワークに求人申込書を出す場合でも、年齢制限を設ける具体的理由を記入すれば、受理してもらえます(職業安定法5条の5)。

年齢制限を設けることに合理的な理由があると認められるのは、次の場合だけです。

■年齢差別禁止の例外事由
  1. 定年年齢を上限として労働者を期間の定めなく募集・採用する場合
    (定年が60歳の会社で、60歳未満の者に限定して募集するケースなど)
  2. 労働基準法などで年齢制限が設けられている場合
    (18歳以上の者に限定して、危険有害業務担当を募集するケースなど)
  3. 長期勤続によるキャリア形成のため若年者などを期間の定めなく募集・採用する場合
    (職歴不問で募集し、採用後は新卒者と同様の訓練・育成体制で育てていくケースなど)
  4. 技能・ノウハウの継承のため、労働者数の少ない特定職種・特定年齢層(30~49歳)を対象に、期間の定めなく募集・採用する場合
    (電気技術職として30~39歳に限定して募集するケースなど)
  5. 芸術・芸能における表現の真実性が要請される場合
    (映画やドラマの子役を募集するケースなど)
  6. 60歳以上の高年齢層または特定年齢層の雇用を促進する施策の対象者に限定して、募集採用する場合
    (若年者トライアル雇用の対象者として、35歳未満の者に限定して募集するケースなど)
     

若手が活躍している職場写真で若年採用をアピール

年齢を限定して募集することは、上記の6つの例外事由に該当しない限り許されません。しかし、比較的若い従業員を採用している会社の求人広告などを見ると、「若手が活躍している職場です」などのキャッチコピーとともに、若い社員ばかりが写っている職場写真を掲載しているケースが多いようです。

新卒者あるいは既卒者の卒業年次を指定して募集することも、年齢を限定したものではないので、年齢差別に当たりません。「平成23年大学卒業見込みの方」「平成20年~22年大学卒業の方」という表現は可能です。

年齢差別禁止違反の罰則は特になし

雇用対策法は「年齢差別によらない均等な機会の確保」を定めているだけであり、結果として若年層に偏った採用となっても、それだけで違法とはなりません。そもそも違反を立証することが困難です。

高年齢者雇用安定法(18条の2)では、年齢の上限制限(65歳未満)を設ける場合に、求職者や職業紹介事業者などにその理由を明示するよう求めています。しかし行政は、明示の有無などに関して「事業主に対して、報告を求め、または助言、指導若しくは勧告をすることができる」だけです。均等法違反のような社名公表制度すらありません。現時点では年齢差別禁止については、事実上罰則がないに等しい状況です。


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