企業間競争が熾烈な新卒採用……採用計画の立て方は?

採用計画の立て方はどうすればいい?新卒・中途人材の採用 

 新卒を採るか、中途採用を採るかは判断に迷う


採用には新卒採用と中途採用があります。新卒採用とは、中卒、高卒、大卒・大学院卒の学歴別に新卒者を対象に採用活動を行うことです。最近は中卒・高卒への求人が減り、主に大卒・大学院卒を対象とした採用が新卒採用の中心となっています。

新卒採用は『学卒一括採用』という制度のもと、各企業一斉に一定時期に採用活動を集中的に実施します。そして、卒業年度に就職する限られた学卒者を対象に 行います。企業間の採用競争は熾烈で、人気のない企業や採用活動に出遅れた企業は、求める人材を獲得できず採用シーズンを終わることも珍しくありません。

『学卒一括採用』制度は、学生にとっても厳しいもの。卒業年度の採用選考に漏れた学生は、翌年度は新卒者ではなく既卒者(中途採用)として採用活動をしなければならなくなり、非常に不利な立場に立たされます。最近政府は、『学卒一括採用』という制度を新卒者だけではなく、既卒者にも広げようとしています。

今回は新卒採用と中途採用のの使い分けと、採用計画の具体的な立て方など、採用に関わる必要事項をご紹介していきます。

■index  

優秀な人材を安定的に確保する『新卒採用』

ある程度の企業規模となり業績が安定している企業では、新卒採用を行う意欲が高くなります。中途採用だと、必要な時に必要な人材を確保することが困難なことが理由です。ある特定の職務要件(スペック)を持った優秀な人材は、常に外部労働市場(採用マーケット)にいるとは限りません。多くは企業に在籍し、外部労働市場に出てこようとはしません。また外部労働市場に出てきたとしても、その時に相応しい企業求人があるとは限りません。どうしても企業の求人と求職とのタイムラグやミスマッチが生まれてしまうのです。

そこで優秀な人材を安定的に確保するために、企業は新卒採用を進めるのです。ただし新卒者は即戦力とはなり得ず、人材育成がどうしても必要となります。そうなると新卒を採用し中長期的に育成し、優秀な人材に育て上げていくプロセスが整備されている一部の企業だけが新卒採用を行うことになります。新卒者を育てる環境や状況にない企業は、新卒採用はあきらめて中途採用を採用戦略のベースに置いた方がいいでしょう。

【新卒採用のポイント】
・優秀な人材を安定的に確保したい時
・中長期的な人材育成をできる環境が必要
 

即戦力を求める『中途採用』

中小企業やベンチャー企業のように、優秀な人材が不足していることで成長が阻害されているような企業は、新卒採用ではなく中途採用をベースに、少しずつ人員を増やしていき内部体制を整備していくことをお勧めします。新卒採用は魅力的ですが、他社においてすでに能力を開発され具体的な戦力として活躍してきた人材を、外部労働市場から一本釣りしてくる方が効率的です。

私の周りにも無理して新卒者を採用している企業があります。並みいる有名企業と同じ新卒マーケットで勝負しても、数年でコア人材に育つ優秀な学生はそう簡単には採れません。中小企業では、よほど商品や事業に魅力があり、企業価値を明確化(ブランディング)したメッセージを発信しない限り新卒マーケットでは注目されないからです。

【中途採用のポイント】
・中小企業・ベンチャー企業向け
・新卒と違い即戦力として会社に利益を生み出してくれる
 

中小・ベンチャーの新卒採用が難しい理由

中小・ベンチャー企業で新卒採用をあまりお勧めしないもう1つの理由は、新卒者の3割が3年以内に辞めると言われています。高卒で39.2%、大卒32%が新卒後3年以内に離職しています。
厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況

実際、若年者の離職率は高く、若年者は自分の将来キャリアにつながらないような仕事経験や、能力を発揮できる場がない企業には、踏みとどまろうとはしません。

逆にいえば、中小・ベンチャー企業であっても他社にない魅力があって、それを経営理念や経営方針で明確化させ、適切なメディアを通じて明確なメッセージを発信しつづけており、かつ人材を育てるシステムや若手が活躍できる場が用意されている企業は、新卒採用をどんどん進めた方がいいでしょう。

新卒者は他社経験がないので、自社の組織風土に染めることが比較的簡単です。結果的に愛社精神を持ち、会社のために一生懸命働いてくれます。会社としても新卒の時から観察しているので、その人の能力や適性をきちんと把握できます。中長期的に会社幹部を育成するには新卒採用がベストです。
 

採用計画は2つの側面から考える

人材は欲しい時にすぐ雇えるものではないので、ある程度計画的に採用していくことになります。採用計画は中途採用の場合も必要ですが、長期間かけて育成していく新卒の場合に特に必要です。以下は、特に新卒採用を念頭において採用計画の立て方を説明します。

採用計画には2つの立て方があります。
  • 経営戦略や事業計画など中長期的ニーズにもとづいて立てる方法
  • 現場の短期的なニーズにもとづいて立てる方法
採用計画は、企業の設備投資計画と同じで、経営戦略や事業計画にもとづいて計画することが理想です。順を追って詳しく説明していきましょう。
 

自社の人員構成を確認する

採用計画に先だって、自社の人員構成(人数)を確認します。部署別に何人の社員がいるのかを、年齢別に表にまとめるのがいいでしょう。『部署別・年齢別人員構成表』をエクセルなどで作成し、それをもとにシミュレーションすれば、3年後、5年後、10年後の人員構成が一目瞭然になります。この部署では5年後に 定年退職者が出るが、中堅社員がいないので技能承継に問題が生じるとか、しばらく新人を配属していないので年齢構成にひずみが出ているなど、組織の中長期的な問題がたくさん見えてきます。
 
部署別・年齢別人員構成表(見本)

部署別・年齢別人員構成表(見本)


製造業などでは、職種別で人員構成を調べておくことも必要でしょう。板金加工、塗装、プレス加工、切削加工など熟練が必要な作業(職種)ごとに、年齢別に人員構成を確認しておきます。若い技能者の育成は時間がかかるので、熟練技能者が定年近くになってから採用したとしても手遅れになり、計画的な採用が必要です。
 

中長期的な採用計画での採用ニーズ

採用計画では『部署別・年齢別人員構成表』を作成して、3~10年単位で人員構成をシミュレーションします。離職率が高い企業の場合は、自社の離職率データーを使って歩留まりも含めて計算しておいてください。退職者が出ないと仮定した場合の人員構成表と、現状の離職率のまま推移した場合の人員構成表の2種類を作って比較するとその差が明確になります。

次に経営戦略や事業計画にもとづいた人員構成表を作成します。たとえば3年後に今の事業を3倍にするとか、支店数を倍増するなどの計画を織り込んだ人員構成表を作成するのです。具体的には、各部署から事業計画にもとづいた3年後に必要な人員数を報告させます。小規模企業やベンチャー企業の場合は、経営者自らが事業計画といっしょに人員計画を立てればいいでしょう。

現状のまま推移した場合の3年後の人員構成表と、経営戦略・事業計画を織り込んだ3年後の人員構成表とのギャップが、その企業の採用ニーズとなります。基本的には、中長期的な採用ニーズを前提に毎年度の採用数を決めます。

【中長期の採用計画を立てる際のポイント】
・3~10年単位で人員構成をシミュレーションする
・離職率・退職者を計算に入れたうえで人員構成を考える
・経営戦略や事業計画を元に人員構成を考える
 

短期採用計画での採用ニーズ

中長期的な採用計画を立てたとしても、必ずしもその通りいくわけではありません。毎年の採用は予算によって行われます。景気が落ち込んだ時期は採用予算が削減され採用数が一気に減少。逆に予想以上に企業が成長し、年度の途中でも人員が不足し追加採用しなければならないこともあります。実務上は短期的な採用計画を中心に採用活動を行っているのが実情です。

そこで中長期的な採用計画だけではなく、1年ごとの短期的な採用計画も必要となってきます。短期採用計画は、短期的な採用ニーズに対応させます。

短期的な採用ニーズとは以下です。
  • 従業員の退職など欠員補充
  • 業務の繁忙など一般人材の増員
  • 新規事業の開始など専門人材・経験者の増員
これらが短期的な採用ニーズの代表的です。

「うちの部署は慢性的に人が足りない。何とかしてくれ」
「急に従業員が退職したので仕事が回らなくなった」
「予想以上の受注で現場はてんてこ舞いだ」

まさに現場の悲鳴のような声が短期ニーズです。短期採用計画では、上記のような現場の声を部署別の「人員要求票」という形で吸い上げます。実務的には、中長期的な採用計画の数字をにらみながら、部署別の人員要求票の数字をもとに次年度の採用計画を立てることになります。このように短期採用計画は1年単位で立てますが、年度の途中で新たな採用が必要となった場合は、短期採用計画の修正という形で実施します。
人員要求票(見本)

人員要求票(見本)

【短期的な採用計画を立てる際のポイント】
  • 1年ごとの短期的な人員構成のシミュレーションをする
  • 「欠員が出た」などの現場の声を参考に短期採用計画を考える
 

短期採用計画の注意点

各部署から「人を採用してくれ」という声が届いたとしても、そのまま鵜呑みにしてはいけません。今どき仕事が楽な部署はあまりないので、どの部署も増員を要求していきます。そういった声にいちいち対応していたのでは、いくら人件費予算があっても足りません。

基本は現在の人員で対応させますが、増員が必要な場合も安易に外部から採用するのではなく、内部で余っている人材を回すことを検討しなければなりません。私が採用などで相談を受けた時には、必ず内部の余剰人員の活用をお勧めしています。余剰人員とは、能力的な対応の幅が狭いために他の部署で活用できない『塩漬け社員』を指します。このような社員であっても、能力の再開発をさせて戦力化させなければ、いつまでも会社の負担です。業績が伸び悩んでいる会社には『塩漬け社員』がいたるところにいながら、一方で新規採用を続けている会社が多いような気がします。
  

雇用形態は「人材ポートフォリオ」で決める

人材を外部から採用する場合に、どのような雇用形態で採用するかが重要になります。いわゆる正社員かそれ以外の形態で雇い入れるかという問題です。基本的には正社員採用を中心に置き、人材が必要となる期間が短期間である場合はパート、アルバイトなどの『有期契約社員』を活用するというスタンスでよいでしょう。

ただし有期契約社員の雇用については規制が強化される傾向があり、留意が必要です。現在でも、有期契約を5年継続すれば、社員に無期契約への転換請求権が与えられています。

雇用形態については、人材ポートフォリオという考え方があります。自社にとって重要なコアとなる業務は外部の企業に外注するのではなく、従業員を雇用してでも自社の業務として取り込むことが重要であるという考え方です。逆に、それほど重要でない業務は外注に出すか、定型的な決まり切った業務であればパート・アルバイトを活用して自社で行うとよいでしょう。
人材ポートフォリオ(見本)

人材ポートフォリオ(見本)


全ての業務を自社の正社員で対応しようとすることは無理があります。どの業務を正社員に担当させるかをしっかりと決めることが大切です。
 

短期採用計画の必須事項

短期採用計画は募集・採用に向けた具体的なアクションプランとなります。
以下が短期採用計画で決めるべき必須事項です。
  • 採用人数
  • 期限
  • 求めている人材
  • 募集・選考方法
これらの事項を採用する前に明らかにしなければなりません。

【関連記事】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。