企業には、人を雇い入れることで3つの責任が生じると言われています。「賃金を支払う責任」「人を雇い続ける責任」「職場環境を整える責任」です。人材採用を行おうと考えている経営者や管理者の方には、心構えとして必要です。

賃金を支払う責任

雇入れ

 雇入れは会社の都合だが、会社は賃金を支払い続ける責任がある

「最近忙しくなってきたので人でも雇うか」「退職者が出たので人員補充しないといけない」「新事業をスタートさせたいが社内に経験者がいない」など、企業が人材採用を考え始める理由は様々ですが、共通していることは人を雇い入れるのは全て会社の都合だということです。

人を雇うことは会社にとって必要なことですが、雇われる人にとっても非常に重大。特に正社員ともなれば、転職をしない限り定年までその会社で働き続けるこ とになるので、文字通り「一生がかかっている」といっても言い過ぎではありません。人を雇うことは、その人の人生を保障すること。そのため安易な採用はで きません。

企業が人を雇い入れた場合の一番の責任は、賃金を支払い続けることです。大卒男子の場合の生涯収入が産業平均で約2億6千万円(退職金・諸手当除く)、高卒男子の場合は約2億2千万円にものぼり、相当な投資となります(平成16年賃金構造基本統計調査をもとに社会経済生産性本部が推計したもの)。

企業の人件費には、賃金や退職金など直接従業員に支払うもの以外に、健康保険や年金などの社会保険料や社宅などの福利厚生費、人材育成のための教育訓練費などが加わります。人を雇い入れることは非常に大きな投資なのです。言い換えれば、これだけの金額を従業員に支払う責任と覚悟が、企業には求められるのです。

賃金支払いの留意点

賃金は毎月決まった日に、その全額を支払う義務(労働基準法24条)が会社にあります。「今月は資金繰りが大変だから給料支払い日を遅らせる」ことはできません。人を雇おうと思ったら、まず賃金を定期的に支払い続けられるかどうかを確認しなければなりません。安定して賃金を支払うことができない企業では、良い人材は定着しません。たった1回の賃金遅配で従業員の企業不信が一気に高まり、次から次へと優秀な人材が辞めていきます。

一般に賃金遅配は「倒産の前兆」と言われ、絶対に避けなければなりません。私の経験でも、賃金遅配があった会社の雰囲気は急速に悪化し、顔見知りの従業員からの相談が一気に増えました。

人を雇い入れる資金的余裕があるかどうかは、毎月の資金の入出記録である資金繰り表で確認しましょう。実際には、経営計画書できちんと事業計画をシミュレーションしてみることが大切。人の採用にはお金がかかるので、「従業員の採用は計画的に!」はキーポイントです。なお人を雇った後は、日繰り表を作成している企業であれば、賃金支払日の資金残高に注意して資金ショートすることがないように気をつけましょう。資金が不足する場合は、早めに売掛金を回収したり銀行融資を受けるなどの資金手当が必要です。