・椀物
土瓶蒸し
そして椀物は、今年最後の「土瓶蒸し」。今の時期だと鱧も松茸も全てが「名残」の食材ですので、食べていても秋の終わり、冬の到来を感じますね。同じ料理でも食べる時期によって感じ方までもが変わるのが、日本料理の面白いところ。そういう意味でも、日本料理は日本ならではの「四季」を料理や器、設え(空間)を通じて表現する総合芸術と言えるでしょう。
蓋を開けた時に漂う、秋の香り
味わいのほうは、これぞ「滋味」! と思わず唸ってしまうレベルの出汁となっていて、しみじみと旨味が湧き出すような繊細さと上品さを兼ね備えた味わい。鱧のエキスと松茸の香りが寄り添うような余韻となり、晩秋の余韻を舌の上に残していくようです。
・向付
向付
向付は「シビマグロ」「いさきの松皮造り」「ヒラメ(エンガワ付き)」「車海老」「天然鰤の焼霜造り」と、豪華5点盛り! 前回(移転前の建仁寺時代)にいただいた向付も印象的でしたが、今回の向付は盛り付けも含めて、前回を越える感激がありましたね。
派手な演出でドーン!と魅せつける向付も楽しいですが、このお店のように食べ進めていく度に驚きが待っている向付もまた一興。
特に車海老の下に忍ばせてあった「天然鰤の焼霜」が特筆物で、車海老を食べた後、これを見つけた時の嬉しさはまた格別! 脂ノリノリの焼霜仕上げは、艶やかな色気さえ感じるほどの仕上がりで、蕩ける食感が堪りません。
・焼物
子持ち鮎
焼物は、これも今年最後となる「子持ち鮎」と、先程の向付で出てきた「車海老」の頭部分を塩焼きにした2種盛り!
特に「子持ち鮎」の焼き加減が完璧で、卵部分の真味を活かしつつ、頭から尻尾まで全て食べられるように綿密に焼き込まれてあり、張ち切れんばかりに膨らんだ卵部分の食感&旨さと、香ばしい皮目が心を打つ味わいでした。
私が今年の秋に食べてきた子持ち鮎の中では間違いなく最高クラス! 晩秋にも関わらず、これだけ見事な子持ち鮎をいただけるとは……感動もの。
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夜コース料理の後半」を御紹介します。