コンサルタントで働く/コンサルタントの転職ノウハウ

監査法人から戦略コンサルへ 川崎貴聖氏1(2ページ目)

株式会社コーポレイト ディレクション川崎貴聖氏インタビュー。時には面と向かって社長に「ストップ」をかけなくてはならないのがコンサルタントの仕事。会計士資格をもち監査法人から、戦略コンサルタントに転職された経歴をもつ川崎さんのコンサルタント力についてお話を伺いました。

執筆者:大石 哲之

ルールがない!あまりに自由な仕事に戸惑いも

-転職してみて、会計士の仕事とコンサルタントの仕事の違いをどこに感じましたか?

CDI川崎貴聖氏

ルールや型があるのではなく、最適なものを自ら創り出す

とにかく、「ルールがない」の一言に尽きますね。

というのも、前職では確固たるルール(法規や前例)があって、それに照らし合わせれば、何かものを言えました。しかし、コンサルティングの場合はそれが全くありません。コンサルティング業界ではよく「ゼロベース」といいますが、実際は想像以上に「ゼロ」から考えるんですね。仕事の決まりというのは、大げさではなくプレゼン資料のフォーマットくらいです。決まったルールに照らし合わせる仕事を、決まった手順で進める監査と比べて、あまりに自由なんです。

だから、初めは「何に立脚してものをいえばいいのか」と常に不安を覚えていて、何をやるべきなのかも全く分かりませんでした。この「無形」への戸惑いを拭い去るのは本当に大変でした。

-そこをどのようにして克服されたのですか?

まず、プロジェクトを経験することで、「無形」ということが段々と分かってきたんです。

クライアントの置かれている環境、つまり市場の規模・成長性・ニーズ、競合の数・強み・弱み・戦略、クライアントの強み・弱み・経営者や従業員の性格・考え方・政治的な力関係など、挙げれば限りない。それぞれクライアントによって千差万別であるので、最適なサービスをオーダーメードで提供しようと考えると、決まったルールを踏襲することは、時に障害になりかねません。だから、クライアント、コンサルティングのテーマ、その場の状況によって、自分の言うことが変わってもいい、むしろその時々のクライアントにとって最も良いものに変えるべきだということに気づきました。つまり、どこかに確固たるルールや型があるのではなく、その時に、その場で最適なものを自ら創り出さなくてはならないということです。

それに気づいた後は、縮こまらずにやりたい放題やってみることで克服しました。例えば、ミーティングで「川崎君の作業はこれです」と決められても、その作業は本当に必要なのか、本当にミーティングで決まったやり方でいいのかを考えてやる。そして自分が最善だと思ったら、さらに1つ2つ、思い切って自分のやりたいことをやってみるという感じで初めは失敗も少なくなかったですが、積極的に経験を積んでいきました。

同じ会社を別のコンサルタントが担当したら別の結論になる?

-前職のスキルが活きたところはありませんか。

正直なところ、「前職のスキルが活きた」という印象はあまりないですね。確かに財務諸表の分析や数値計画の策定、M&A等で会計士のスキルが活きる面はあるのですが、それよりも「ルールのない世界でゼロから考える」習慣やスキルの足りなさを痛感した印象が強烈です。コンサルティング業界は会計士出身の方もそれなりにいますが、皆さん同じことをおっしゃいますね。

-決まったルールを当てはめるのではなく、思考の枠組みを広く自由にするということは、極端な話、同じ案件を別のコンサルタントが担当したら、別の結論になることもあるということですか?

そういうことも十分にあり得ると思います。例えば、サッカーの監督の場合、目標をどこに置くべきなのか、攻撃重視なのか守備重視なのか、そのために試合でどのようなフォーメーションにするのか、選手は誰を起用するのか、チームや選手のどの要素をどのような方法で強化するのか、それらの考えをどのように伝えるのかといったことは、監督のこれまでの人生で形成されたサッカー観や組織観、人間観等によって大きく変わるし、「これが最も強いサッカー」という決まった正解はないですよね。「経営」の世界もそれと同等かそれ以上だと思います。
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